※本記事は『日本人のための漢字入門』(阿辻哲次)の抜粋です。 儒者には認めがたい解釈 漢文では文末に置き、断定の助字として使われる「也」も、最初からその意味で作られた漢字ではなかった。 この文字については、「漢字おタク」たちによく知られた話がある。私が学生だった時に、京都大学文学部で中国語学・文字音韻学関係の講義を担当されていた尾崎雄二郎・人文科学研究所教授(当時)が、『月刊しにか』(大修館書店)という雑誌に「漢字おタク錬成講座」と題する文章を連載されていた(1996年4月~97年3月号)。 毎回かなり専門的な内容にわたる部分が多く、これでじっくりと「錬成」されたら相当に強力な漢字おタクができあがるだろうなと思いながら私も毎号楽しみに読んでいたが、その最終回(97年3月号)に、我が師匠は「也」という漢字を採りあげられた。 最終回のタイトルは、「疑ウ可キ者無シ、而モ浅人妄リニ之ヲ疑ウ」となっ
