『王様は裸だと言った子供はその後どうなったか』という本がある。『裸の王様』『桃太郎』『蜘蛛の糸』などの誰もが知っているお話を独自の理論で再解釈して新しい切り口から解き直した一冊なのだが、これがべらぼうに面白い。森達也というドキュメンタリー作家の人の作品なのだが、機会があれば是非一度読んでみて欲しい。 「愚か者には見えない不思議な衣装なんだ」と煽られてすっぽんぽんで町中を練り歩いた王様は、結局一番の愚か者だった。愚か者だったのだが、あるひとりの子どもが「王様は裸だ!」と言うまでは、そうではなかった。国民は、「愚か者には見えない」という衣装を、見えないという意味において、その衣装が「見えていた」。そう信じていたから、すっぽんぽんでも王様は王様で、国民は褒め称えるしかなかった。誰もが自分を騙していたその中で、真実を解き明かしてしまった少年は、果たして人一倍勇気のある少年だったのだろうか。ただ絶望