――「使用を許可することはできません」 その返事に驚いた。 筆者は、豪海軍に書籍に使うための写真3点の許可を申請していた。無論、私が書いた本の中身は、国防省批判でもなく、反軍事的でもない。豪潜水艦契約をめぐる交渉プロセスを、オーストラリア現地からの視点で記録しただけだ。 2016年4月、豪政府は次期潜水艦12隻建造のための「競争評価プロセス」の結果を公表。ターンブル豪首相は共同開発先としてフランスのDCNS社を挙げた。豪史上最大の巨額契約、約500億豪ドル(約4兆4000億円)のブロジェクトだった。 三菱重工業と川崎重工業と日本政府が一体となり、「官民連合」として契約取得をめざした日本チームの名前はそこになかった。 ◆豪海軍の「気遣い」 「(契約話と)日豪トライデントに直接のつながりはなくとも、読者がまるでオーストラリアが日本を打ち負かしているかのような、あるいは追い求めている