アルミニウムの「水素脆化」は、アルミニウム合金内に存在する水素が金属の強度を低下させる現象ですが、そのメカニズムは長い間分かっていませんでした。このアルミニウムの水素脆化や応力腐食割れといった技術的課題が、アルミニウムの活用範囲の制限となっていたのです。 この未解決課題に対し、九州大学大学院は岩手大学、京都大学、高輝度光科学研究センターと共同でアルミニウムの水素脆化メカニズムの解明を進め、ナノサイズの添加元素を入れることで水素脆化を防止できることを発見しました。今回は、九州大学大学院工学研究院の戸田裕之(とだ・ひろゆき)教授にアルミニウムの水素脆化メカニズムや防止技術についてお話を伺いました。 ──── アルミニウムは身近な素材ですが、強度についてイノベーションは起きてこなかったということでしょうか。 戸田氏(以下同): 鉄は技術革新が進み、明石海峡大橋では2GPa(ギガパスカル)くらい、