東京家庭裁判所医務室(精神科) 針間 克己 私は臨床的には精神科医として性機能不全の患者さんを多く診てきました。そのために夫婦の離婚問題に関わることが少なくありません。つまり「夫が性的におかしいから診断書を」といったケースなどに治療者が巻き込まれるわけです。 また現在は東京家庭裁判所で仕事に携わっていますので,夫婦の性について法律はどう扱っているのか,「門前の小僧」のように聞きかじってきていますので,それを紹介したいと思います。 もちろん,夫婦の性について,法律がどうあらねばならないと具体的な文言で規定しているわけではありません。そこで代表的な判例を6つ紹介し,これらを考えてみたいと思います。 ●6判例にみる夫婦の義務と権利 第1例。1962年最高裁判決。副睾丸結核のため睾丸切除手術を受けた夫の性交不能。「夫婦の性生活が婚姻の基本となるべき重要事項」と