ジョン・スミスの新刊『ユートピア2.0』を読む。現在の文化状況と政治思想の双方を視野に収め、既存の思考に潜む陥穽を批判しつつ、新たな理論構築を試みている書。提起されてはすぐさま無数の問いへと開かれていく思考の種子がそこには散りばめられている。二部構成のうち、第一部は Culture、第二部は Politics と題されており、ある意味乱暴すぎると言えなくもないその論理展開は、しかし現代世界を席巻する閉塞を打破するためのロジカルな起爆剤と言い換えることもでき、けっしてその価値を貶めるものではない。それよりも、まずは新たなユートピアの見取り図を描ききってみせたその力技に驚嘆すべきだろう。また、風通しのよい論理の貫徹性を保ちつつも、その全てを到底追走することのできない領域横断的な知識の該博ぶりには舌を巻くほかない。第一部のキーワードは散乱性、断片性であり、第二部のそれは暫定性、仮設性である。スミ