十年も通った蕎麦屋がある、というと大仰に聞こえるが、ただの立ち食い蕎麦屋の話で、しかし十年通ったことは嘘ではない。職場の近くにあるのだ。私は出勤が遅く、飯は午過ぎの二時や三時にとる。必然、定食屋、カフェ、居酒屋のランチタイム等は食いっぱぐれるし弁当も大概売り切れている。近隣でこの半端な時間に飯を食わせるのは松屋、日高屋、マクドナルド等があってこれらも悪くはないが、しかしこの蕎麦屋が抜きん出て昼食の命綱であるには違いない。 変哲もない立ち食い蕎麦屋だがカレーが不味いことが気に障る。立ち食い蕎麦業においては、カレーは蕎麦より重要な品ではないのか。しばしば不味さを忘れて食っては、不味い、不味い、と思う。折々季節メニューを出すが、これも美味かった試しはない。なかでも冬にだけあるけんちん蕎麦は不味くて、カレーにもまして二度は食えない。カツ丼に小蕎麦のセットが結局一番良いようで、近年はそればかり食って