首都圏連続不審死事件の木嶋佳苗被告は様々な意味でセンセーショナルだった。木嶋佳苗に恐怖や嫌悪を抱く人は多い。しかし「堂々としている」「男に媚びない」「男に振り回されない」と、彼女に憧れる女性もいる。木嶋佳苗を通して、迷走し続ける「かくも厄介な女の幸せ」を読み解く。 女の幸福神話のちゃぶ台返し 2012年は、もしかしたら「女の幸せ像」刷新の年かも知れない。しかも、ひどく乱暴に「定説」を覆す方向で。 思えばゼロ年代は、女の幸福像が保守反動を見せた時期であった。まずこの傾向を明らかにしたのは、酒井順子の「負け犬の遠吠え」(2003年)ブームである。同書の「いくら仕事ができて美人でも、30代以上・未婚・子なしは負け犬」との自虐ネタは、結果的に作者の意図からは逸れて該当女性たちを深刻に傷つけてしまった。焦る女性たちに追い打ちをかけたのは、いずれも07年にブームとなった上野千鶴子「おひとりさまの老後」