タグ

ブックマーク / econ101.jp (41)

  • ノア・スミス「移民流入の害は,いっこうに実証に現れない」(2024年5月10日)

    移民受け入れを支持する人間として,ぼくは懐疑的な人や批判的な人に耳を貸すようにつとめてる.どんな国にも,自らがのぞむならどんな人間でも招き入れる権利がある――あるいは,入国を拒否する権利がある.移民の流入で自分たちの文化が変わってしまうのを人々が心配しているなら,それは完璧に許容されるべき態度だ. ただ,それと同時に,移民流入制限派の人たちは移民受け入れにともなう経済的な害悪をあれこれとたくさん主張している――賃金低下,政府財政への負担,などなど.それでいて,そういう主張はずっと証拠と矛盾しつづけている. たとえば,多くの証拠から,移民流入は――低技能移民の流入ですら――現地生まれの人たちの賃金や雇用の見通しに悪影響を及ぼしていないことが明らかになっている〔日語版記事〕.最近出た Michael Clemens & Ethan Lewis の論文を見てみると,この研究はとても「きれい」な

    ノア・スミス「移民流入の害は,いっこうに実証に現れない」(2024年5月10日)
  • ノア・スミス「日本の生活水準,低すぎ」(2022年5月24日)

    [Noah Smith, “Japan’s living standards are too low,” Noahpinion, May 24, 2022] 働きづめでも報われない国 日からこんにちはこんにちは! 2週間の旅行でこっちにきてて,せっかくだから日について何か記事を書こうと思う.まずは,経済の話からはじめよう. たいていの人たちが日について最初に気づくのは,各地の都市がいかにすばらしいかってことだ.とりわけ東京は,現代の驚異だ.キレイに刈り込まれた木々に取り囲まれて,設計のしっかりしたぴかぴかのビル群がそびえたっている.レストランやお店や各種の娯楽は目眩がするほど数知れず,どれもこれもすばらしい.どこも混み合ってるけれど,それでいていつもなぜか静謐を感じさせる.そして,ほんの数分歩けば電車の駅にたどり着いて,そこからどこでも必要な場所に向かえる.他のどんな国もおよばない

    ノア・スミス「日本の生活水準,低すぎ」(2022年5月24日)
  • ノア・スミス「1997年から日本経済がどれほど不調だったか」(2023年11月26日)

    通説では,1990年にかの不動産バブルがはじけてから日は「失われた○十年」に苦しんできたという話になっている.実のところ,一人あたり GDP を見ると,他の豊かな国々にくらべて日の実績が見劣りしはじめた起点は1990年ではなく1997年に思える.97年といえば,アジア金融危機のあった頃だ. この「失われた○十年」論に対して典型的に向けられる反論では,こう語られる――日が停滞しているように見えるのは,大半が人口の高齢化によるものであって,実際の生産性で見ると日は2000年頃から問題なくやっている.新しく出た Fernandez-Villaverde, Ventura, & Yao の論文は,こう主張している: 多くの先進諸国では,この数十年で,高齢化にともなって,一人あたり GDP成長と労働年齢の成人一人あたり GDP 成長のちがいは大きくなってきている.日のように一人あたり GD

    ノア・スミス「1997年から日本経済がどれほど不調だったか」(2023年11月26日)
  • ノア・スミス「西洋の左翼は混乱してる」(2023年10月10日)

    Photo by Stuart Meissner 無辜の市民の虐殺をうれしげに支持するのは,残忍としか言えない じきに経済ネタのブログ活動に戻るよ.約束する.そのときは,まずクラウディア・ゴールディンのノーベル経済学賞から取り上げよう〔追記:こちら〕.ただ,まずは,イスラエル-ハマス戦争についてもうひとつ,書いておかないといけないことがある. 冒頭の画像は,アメリカ民主社会主義党のニューヨーク市支部がパレスチナの大義を支持して行った集会の様子だ.この集会が行われたのは10月8日,1,000人以上のハマスの武装集団がイスラエルを攻撃した翌日のことだ.これだけじゃなく,全米各地のアメリカ民主社会主義党の支部も同様の集会を開いたし,あちこちの大学のキャンパスでも集会は開かれた.報道によると,写真に写ってる女性は,イスラエル支持の反・抗議派の人たちに鉤十字を見せつけたそうだ. まだこの件をあまり読

    ノア・スミス「西洋の左翼は混乱してる」(2023年10月10日)
  • ジョセフ・ヒース「アメリカの多文化主義は矛盾を抱え込んでいる」(2023年9月23日)

    Multinational culture isometric composition with people of different races and nationalities in folk costumes vector illustration しばらくアメリカに在住していたが、人種的正義を求める闘いで公理となっているものは、現実的な解決策となっておらず、逆に人種間の対立を世代をまたいで再生産してしまっていると思った。これをアメリカリベラルは理解できておらず、多くの逆効果(マイノリティ・グループの一部を共和党の掌中に追いやっている等)を生んでいる。このエントリは、そう確信するに至った分析を極めて簡潔にまとめるのを目的にしている。他の場所や、今後のエントリで、この立場を裏付ける様々な論拠を示す予定だが、今回はひとまず、この私の見解がどのようなものか知ってもらうために、分かりや

    ジョセフ・ヒース「アメリカの多文化主義は矛盾を抱え込んでいる」(2023年9月23日)
  • ノア・スミス「東京は新しいパリだ」(2023年7月17日)

    「しあわせに暮らせる場所は,この世に2つだけ.我が家と,パリだ.」――アーネスト・ヘミングウェイ 地上で最高の都市はどこだろう? 「ニューヨーク市」って答える人がいても,笑い飛ばしたりはしない.いまなお名目上は世界最大の経済大国で金融ハブの役回りをしているニューヨーク市は,他のどこの都市でもかなわないほどの経済力を有しているし,地球上の名もなき数百万もの人々にとって,いまでもあそこは夢の都市だ.「上海」って答えが返ってきたら,ぼくとしては懐疑的になってちょっと口を「へ」の字に曲げてしまうかもしれない.とはいえ,富と権力の中心としていずれ中国が先進諸国を圧倒する定めにあると思ってる人にとっては,上海はなるほど論理的な選択だろうね. でも,実のところ,最高の都市といったら東京だ. かくいうぼくは,またまた東京にいくべく支度を調えてるところだ.今年は,これで三度目になる.今度はじめて東京を訪れる

    ノア・スミス「東京は新しいパリだ」(2023年7月17日)
    tsutsumi154
    tsutsumi154 2023/09/08
    ニューヨークになるはずでは
  • ブランコ・ミラノヴィッチ「西側が新自由主義を成功させ、東側が社会契約を破棄できなかった理由:オイルショックはいかにして資本主義をよみがえらせ、共産主義を終わらせたか」(2022年11月10日)

    西側・東側世界の経済的命運は、1973年から75年の間にターニングポイントを迎えた。この期間、石油価格が(実質価格で)6倍に上昇して経済成長は減速し、実質所得の上昇と、揺りかごから墓場までの社会的保護をベースにした政府と市民の間の社会契約は崩壊した。これは目新しい議論ではない。この仮説については、何百とは言わずとも、何十冊ものが書かれている。そうしたの中で、フリッツ・バーテルの非常に行き届いた研究書“The Triumph of Broken Promises”『社会契約破棄派の勝利』を際立たせているのは、危機の対応において、民主主義の西側諸国と権威主義の東側諸国はどのように対応し、最終的にどのようにして冷戦の終焉と共産主義の失墜を導いたかを、並列的に分析していることである。この統一的な分析枠組みに加えて、いくつかの有名な政治的事象(ソ連と他の共産主義連邦の分裂、ドイツの統一など)への

    ブランコ・ミラノヴィッチ「西側が新自由主義を成功させ、東側が社会契約を破棄できなかった理由:オイルショックはいかにして資本主義をよみがえらせ、共産主義を終わらせたか」(2022年11月10日)
  • ステファニー・ケルトン「中央銀行は利上げによって、インフレを低下させられるのだろうか? それとも高進させてしまうのだろうか?」(2023年2月20日)

    先週、パウエルFRB議長は、「インフレ低下プロセスが始まった」と述べた。パウエルは、インフレを2%まで引き下げるまで「かなりの時間がかかるだろう」と言っていたのだが、先週の発言を受けて多くの人が安堵したかっこうだ。インフレ率を目標率まで低下させるため、パウエルは、政策金利の持続的な引き上げを示唆している。 今週になって、インフレのたるみは進行中ーーつまり、インフレは加速していることが判明した。 1月の総合インフレ率(CPI)は、前月比では0.5%上昇している。これは、2022年10月以降で最も高い物価上昇率だ。前年比では、6.4%上昇している。これは2021年10月以降だと最も低い物価上昇率だ。料とエネルギーを除いたコアインフレ率は、複雑な変遷を描いている。 1月のCPI統計が発表される前だと、〔FRBが示唆していた〕「継続的な利上げ」という表現は、25ベーシスポイントの一連の政策金利の

    ステファニー・ケルトン「中央銀行は利上げによって、インフレを低下させられるのだろうか? それとも高進させてしまうのだろうか?」(2023年2月20日)
  • ノア・スミス「高齢化はどこまで国家を苦しめるのだろう?」(2023年1月20日)

    今週、人口統計学界隈でビッグニュースがあった。中国の人口が減少に転じたのだ。少し前までだと、中国の出生数が総死者数を下回るのは2023年とされてきたが、予定より一年先んじたことが判明した。 中国の出生者数と死亡者数 これは、ここ数年に行われた多くの公式データの修正の一貫であり、そうした修正済みデータによると、中国の人口ピークが予定より早くなっていることが示されている。実際のところ、2016年以降の出生率の急激な下落は、中国の統計学者が前年の誤差を修正しただけというのが真相であり、人口減少はそれより先んじていたのではないかと僕は考えている。 全くの偶然だが、2023年は、インドの人口が中国を上回ると予測されている年でもある。人口統計を取り始めて以来、中国は初めて地球上の二番手に回りそうだ。 「人口動態とは運命だ。 インドの人口は2100年までに中国の2倍になると国連は予測している。」 多くの

    ノア・スミス「高齢化はどこまで国家を苦しめるのだろう?」(2023年1月20日)
    tsutsumi154
    tsutsumi154 2023/02/27
    アメリカ人6人ってのはアフリカ人の間違いですかね 医療費制御して退場してもらうしかないだろう
  • ノア・スミス「実は日本は様変わりしてるよ」(2023年1月23日)

    By 稲ノ歯鯨 – Own work, CC BY-SA 4.0 2020年代は1990年代とはちがう BBC の東京特派員ルーパート・ウィングフィールド=ヘイズが書いた,日についてのエッセイが広く話題になってる〔日語版〕.ぼくも読んでみたけれど,ひどくいらいらしてしまった.このベテランジャーナリストは――2012年から日に暮らして働いたすえに――日の印象をまとめている.彼によれば,日は停滞して硬直した国で,「ここに来て10年経って,日のありようにもなじみ,次の点を受け入れるにいたった.日は,変化しそうにない.」 でも,日に暮らしたことがあって,2011年以降も年に1ヶ月間ほどここに来て過ごすのを繰り返してる人物として,そして,日経済についてかなりの分量を書いてきた人物として言わせてもらえば,日はまちがいなく様変わりしてる.すごく目につきやすくて重要なところがあれこれ

    ノア・スミス「実は日本は様変わりしてるよ」(2023年1月23日)
    tsutsumi154
    tsutsumi154 2023/02/02
    地方だって過疎化したり太陽光発電パネル並べられたり変わってるよ
  • タイラー・コーエン 「日本における積雪との戦い」(2010年2月10日)

    で開発された除雪ロボット――「ゆき太郎」――は、雪をべて氷のレンガを排泄(はいせつ)するらしい。 「ゆき太郎」には、カメラだけでなく、GPS(全地球測位システム)も搭載されているそうだ。日における除雪の取り組みの最前線については、こちらのページ〔日語版はこちら〕で微に入り細を穿(うが)つ解説がなされている。一部を引用しておこう。 鉄道や道路の雪氷対策の一つとして考え出されたのが、除雪作業で集まった雪を河川まで水力輸送して捨てる「雪水圧送システム」である。その他には、路面に水を撒(ま)いて雪を融かす「散水消雪システム」もある。 地中熱を利用した融雪装置についての詳しい研究はこちら(pdf)を参照されたい。日で積雪に対処するために利用されているその他のテクノロジーについては、こちら(pdf)で取り上げられている。最後に、(青森県)鶴田町在住のジャーナリストの現地報告 [1] 訳注:

    タイラー・コーエン 「日本における積雪との戦い」(2010年2月10日)
  • アダム・トゥーズ「北京が直面するコロナ対策の悲劇的なジレンマ」(2022年12月2日)

    独裁者が恥をかいたという知らせは一般的には喜ばれるが、それが国家の悲劇や真にグローバルな問題をも招くとしたらどうだろうか。 10月に習近平が彼個人による中国の体制の完全支配を宣言したことは、中国歴史にとって不吉な転換となり、世界中の自由の友たちの間に悲哀をもたらすことになった。2020年以降、習近平の個人的権威を主に支えているのは、「人民至上、生命至上(人民とその生命を何よりも優先する)」を掲げる「コロナウイルスの蔓延を阻止するための全面的な人民戦争」、すなわちゼロコロナ(中:清零、英:Zero Covid)である。 習近平政権の最も誇らしい自慢は、米国が100万人以上の新型コロナウイルスによる死者を記録したのに対し、中国はわずか5000人余りであるという事実である。2020年5月15日から2022年2月15日まで、世界中で毎日何千人もの人々がコロナで亡くなっている中、中国土での死者は

    アダム・トゥーズ「北京が直面するコロナ対策の悲劇的なジレンマ」(2022年12月2日)
    tsutsumi154
    tsutsumi154 2022/12/05
    中国製ワクチンを信頼してないのでは
  • ノア・スミス「弱い円は日本にとって好機,なんだけど」(2022年11月24日)

    [Noah Smith, “The weak yen is an opportunity,” Noahpinion, November 24, 2022] じゃあ,なんで日はその好機を利用してないのさ? ぼくが日にはじめて暮らしたのは,2000年代中盤のことだった.当時,円の値打ちはすごく覚えやすかった――だいたい,1ドル=100円だったからだ.どんなものでも,日で値札を見かけたら,頭の中で100で割ってやればだいたいどれくらいの値段なのかつかめた. 「1ドルだいたい100円」為替レートの時代は,約30年続いた.そして,2022年3月に,なにかがブツンといった.円が下がりはじめて,10月には少しのあいだとはいえ1ドル150円にまで下がって,それから1ドル140円にまで少しもどした: Source: Xe.com ドルにかぎらず,日の実質為替レートはあちこちの貿易相手国に対しても下が

    ノア・スミス「弱い円は日本にとって好機,なんだけど」(2022年11月24日)
    tsutsumi154
    tsutsumi154 2022/11/27
    観光業でやりたかったんだろうけどとてもじゃないけどキャパが 原発で東芝もやろうとしたけど
  • ノア・スミス「習近平よ、永遠なれ。中国は一人の凡庸の男によって自縄自縛となってしまった」(2022年10月17日)

    Xi Jinping, forever China has shackled itself to…this one mediocre guy. Postedby Noah Smith, On Oct 17 2022 僕は中国についての専門家じゃないし、専門家のふりをするつもりはない。でも、去年は、たくさんの人が見過ごしているだろう大事なことを、キャッチできたと思う。習近平は、世間で思われてるほど有能な指導者じゃないってことだ。 ノアピニオン 習近平が、言われるほど有能じゃないだけだとしたら? 習近平は、毛沢東以来の中国の最も強力な指導者として広く称賛されている。確かに彼は、権力を非常に効果的に掌握してきている。習近平は、潜在的なライベルだった薄熙来と周永康を完膚なきまでに失脚させ、「反腐敗」キャンペーン通じて自身が関与していない派閥を粛清・服従させる等、前任の主席の下では中国共産党によって

    ノア・スミス「習近平よ、永遠なれ。中国は一人の凡庸の男によって自縄自縛となってしまった」(2022年10月17日)
  • タイラー・コーエン「メキシコ人は寒さで死んでる」(2022年5月1日) – 経済学101

    [Tyler Cowen, “Mexicans die from the cold,” Marginal Revolution, May 1, 2022] 研究では,1998年~2017年の期間にメキシコにおいて気温が死亡率におよぼした影響を検討する.我々の検討により,メキシコの死亡者のうち 3.8パーセントは適正水準に達しない気温によって引き起こされている(毎年 26,000名).しかし,天候に関連した死亡者のうち,92パーセントは寒さに起因するもので,「寒い」天候(摂氏 12度以下)や「いくぶん寒い」天候(摂氏 12度~20度)によって生じている.暑い天候による死者は,わずか 2パーセントにすぎない.さらに,所得分布の底辺層では,気温による死亡率は2倍になっている.最後に,研究では,国民皆健康保険制度の Seguro Popular によって,2004年以降に寒い天候から少なくとも

    タイラー・コーエン「メキシコ人は寒さで死んでる」(2022年5月1日) – 経済学101
    tsutsumi154
    tsutsumi154 2022/05/02
    メヒコ フランス人は暑さで死ぬし
  • スコット・サムナー 「円安を『是正』すべき理由とやらは?」(2022年3月28日)

    ●Scott Sumner, “A weird omission”(TheMoneyIllusion, March 28, 2022) フィナンシャル・タイムズ紙が加速する円安について取り上げている。記事の冒頭を引用しておこう。 各国の中央銀行が金融引き締めに動く中、日銀行はその流れに抗して大規模な金融緩和策を継続する姿勢を鮮明にしている。それに伴い、円がドルに対しておよそ7年ぶりの安値をつける格好となっている。円安を是正するために、日銀が1998年以来の為替介入(円買い介入)に乗り出すのではないかとの憶測が市場関係者の間で広がっている。 月曜日の外国為替市場で対ドルの円相場が2%以上下落し、1ドル=125円の安値をつけた。市場関係者の間では、さらに円安が進むのではないかとも見込まれている。対ドルの円相場は、今月(2022年3月)に入って7%以上下落している。2016年以降だと、1カ月あ

    スコット・サムナー 「円安を『是正』すべき理由とやらは?」(2022年3月28日)
  • サイモン・レンルイス「アメリカでいまにもインフレスパイラルが始まるという話についてどう考えるべきか」(2021年6月7日)

    サイモン・レンルイス「アメリカでいまにもインフレスパイラルが始まるという話についてどう考えるべきか」(2021年6月7日) [Simon Wren-Lewis, “How should we think about talk of an impending US inflationary spiral?” Mainly Macro, June 7, 2021] 2013年に,イングランド銀行のカンファレンスで私が講演をしていたときの話だ.イギリス経済は,3年にわたって景気が急激に悪化していた.講演の詳細は思い出せないが,イギリス経済には財政刺激が切実に必要だ,また緊縮を繰り返してはいけない,という話をしていた.そのとき,非常に著名な学者で,とある中央銀行にも勤めていた経歴の持ち主が,こんな話を言い出した――インフレが起こって,インフレ予想の「タガが外れる」恐れがある.これに返答して喋ってい

    サイモン・レンルイス「アメリカでいまにもインフレスパイラルが始まるという話についてどう考えるべきか」(2021年6月7日)
  • サイモン・レン=ルイス「なぜ西洋諸国の大半はパンデミックでこれほど失敗したのか」(2021年5月4日)

    [Simon Wren-Lewis, “How most of the West got the pandemic so badly wrong?” Mainly Macro, May 4, 2021] 近頃は,そうそう大したことでは驚かなくなっている私だが,OECD 諸国の大半が今般のパンデミック対応で失敗したのには愕然とした.とはいえ,ジョンソンのイギリス,トランプアメリカ,ボルソナーロのブラジル,モディのインドの成り行きに愕然としたわけではない.こうした国々が失敗する理由は,あまりに歴然としていた.なにより,パンデミックが始まる前から,「イギリスは人命を救うために経済を制限することから手を引く国になるべきだ」と,ジョンソンは考えていた.そうすることで,イギリスは世界経済でなんらかの大きな優位を得られるだろうというのが,彼の思惑だった.これによって国民保健サービス (NHS) が陥っ

    サイモン・レン=ルイス「なぜ西洋諸国の大半はパンデミックでこれほど失敗したのか」(2021年5月4日)
  • アレックス・タバロック「EU のワクチン失策」(2021年3月19日)

    [Alex Tabarrok, “The EU Vaccine Bungling,” Marginal Revolution, March 19, 2021] EU ではワクチンの配布がめだって遅れている.西洋諸国の現状から期待される基準に照らしてもなお,遅い.ぼくと AHT チームは,各国政府への助言で,こう主張してきた――ワクチンは,世界でいちばんかんたんな費用便益テストですよ,だって十億 < 1兆なんですから.それなのに,製薬企業が EU に接種1回あたり数千ドルの値打ちがあるワクチンを接種1回あたりたった$5~$40で持ちかけたとき,EU は愚かにも「便乗値上げだ」と言い立てて,交渉に数週間を浪費した.EU諸国の政府が暗黙裏にヨーロッパ人の命の価値をどれくらいだと考えていることになるか,その計算は読者の練習問題にしておこう. ごく最近では,10ヶ国ほどのヨーロッパ諸国政府によって,

    アレックス・タバロック「EU のワクチン失策」(2021年3月19日)
    tsutsumi154
    tsutsumi154 2021/03/21
    EUらしいと言えばEUらしい
  • デイビッド・アンドルファット「カレツキの『完全雇用の政治的側面』について」(2020年2月6日)

    Kalecki on the Political Aspects of Full Employment, Macro Mania, dated February 6, 2020 Sam Levey は、カレツキの1943年の論文「完全雇用の政治的側面(the political aspects of full employment)」を私に思い出させてくれた。これはとても興味深く、示唆に富む論文である。〔ここに〕批評を提供するほど十分に、私はその論文を楽しく読んだ。 論文は、カレツキが呼ぶところの「完全雇用ドクトリン」を所与のものとして扱うところから始まる。基的な考えとしては、民間部門は放っておくとケインズ的な総需要の失敗に陥るというものだ(ゲーム理論による解釈はこちらを参照)。このような自然発生的な「協働の失敗」に対する救済策は、民間需要が低迷し始めたときに実施する、または実施する用意

    デイビッド・アンドルファット「カレツキの『完全雇用の政治的側面』について」(2020年2月6日)