古書展の初日は人も多く気忙しく、ゆっくりと本を調べる時間がない。わしがこのしょーもない棚を見てる間に林哲夫氏や書物蔵さんがトンデモない本を拾ってるかもしれないと考えると、気ばかりあせってしまうのである。その点2日目以降だと客の数も減り、あるいは数は減らなくても濃い古本者の比率が減るので落ち着いて本を選べることになる。今回のみやこめっせでも何回目かの訪問でじっくり見返しや奥付をチェックできて、面白い本を拾えた。年寄りの古本者であるわしは、いわゆる白っぽい本より黒っぽい本、最近は中でも痕跡本の類いに関心が集中している。今回は桑木厳翼『書・人・旅』(理想社出版部、昭和14年4月)の裏見返しに富士山を背景に「満洲冨山房/新京」と書かれた紙が貼ってあるのを見つけた。古書店の値札でよくあるような値札の半券のようだ。また、表見返しには旧蔵者が書いたと思われるが「昭和十七年九月二十一日/新京」と記されてい