昨日のこと。 急いでいた僕はエレベーターに駆け込み、やれやれだぜ、といった風情で『閉める』ボタンを押した。すると背後の方でガスッ!という音がして再びドアが開く。すわ、何事?!と思って開いたドアの外を見ると、僕の遥か前方、およそ50mほど先から悠然と歩いてくる初老の男性の影。後ろには、その部下と思しき男性が会釈しながら『開ける』ボタンをキープ・オンで押し続けていた。 暴れようかな、と思った。 けれど、そんなことで怒るだなんていかにも狭量だろう。それに、エレベーターは一種の公共物であり、僕らは譲り合って使わなければならない。しかし、それでも俺は急いでいるんだ!怒りたいけど、怒るに足りない。そんな風にしみったれた、僕の葛藤。 人は誰しも、心に神を抱いている。 それは『価値観』という名の神だ。 神は八百万の数ほどおわしまし、その態様はそれぞれに異なる。 神の在り方は、単純な善悪では評価できない。