幻冬舎「GOETHE」の創刊号にこうあった。 無趣味のすすめ ―村上龍 まわりを見ると、趣味が花盛りだ。手芸、山歩き、ガーデニング、パソコン、料理、スポーツ、ペットの飼育や訓練など、ありとあらゆる趣味の情報が愛好者向けに、また初心者向けに紹介される。 趣味が悪いわけではない。だが基本的に趣味は老人のものだ。好きで好きでたまらない何かに没頭する子どもや若者は、いずれ自然にプロを目指すだろう。 老人はいい意味でも悪い意味でも既得権益を持っている。獲得してきた知識や技術、それに資産や人的ネットワークなどで、彼らは自然にそれを守ろうとする。 だから自分の世界を意図的に、また無謀に拡大して不慣れな環境や他者と遭遇することを避ける傾向がある。 わたしは趣味を持っていない。小説はもちろん、映画製作も、キューバ音楽のプロデュースも、メールマガジンの編集発行も、金銭のやりとりや契約や批判が発生する「仕事」だ
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