私たちの感情は脳が即興的に生み出しているに過ぎず、心には深い闇も秘密もない――という驚きの研究が発表された。では、“無意識”はどうだろう。私たちの行動を影で支配するものか、感情と同じ瞬間の創造物か? 認知科学をリードする世界的研究者、ニック・チェイターの新刊『心はこうして創られる――「即興する脳」の心理学』から紹介する。 本記事は、ニック・チェイター『心はこうして創られる――「即興する脳」の心理学』(高橋達二・長谷川珈 訳)より、一部編集のうえ抜粋しています 無意識とは何か?氷山が海面の上と下に分かれているごとく、思考というのも意識として可視的なのは小さな頂上部にすぎず、巨大で危険な無意識が水面下に隠されている──この考え方は魅惑的だ。 フロイトとその後の精神分析家たちは、ひよわで自己欺瞞的な意識的な心の背後に隠れている力が無意識であるとみなした。 あるいは心理学者や心理療法士や精神科医は
