祖母が二人の子を抱えて夫と死別したのがまだ30歳になる前のこと。 数枚残っている写真を見れば、ずいぶん美しい人だったことが分かる。洋風の顔立ちでどう見ても白人の血が混じっている。祖先には白人はいないはずだが、どこかで血が混じったのかもしれない。 子を抱えた祖母は生きるために、子を育てるために働きに出た。これという産業もない田舎町。幾つかの会社を経営する地元の金持ちの家に、通いで家政婦として勤めた。 やがてその家の主人の子を宿した。どうも強姦まがいのことがあったらしい。 それで生まれたのが僕の父。 私生児に人権などなかった時代だった。はらませるだけはらませておいて、責任をとるつもりもなかった主人は、何もしなかった。 祖母は亡き夫の兄夫婦に頼んで、その夫婦の戸籍に僕の父を彼らの実子としたうえで、養子縁組をして僕の父をひきとった。 父が5、6歳になる頃まではそれなりの生活費も与えられて、わりあい