・水村美苗 『日本語が亡びるとき』(筑摩書房) 梅田望夫氏のブログで紹介されていて面白そうだったので読んでみた。そして、梅田氏の過剰とも思える褒めっぷりも理解できた。「小説家による日本語論」の域に留まらず、ナショナリズム論・国民国家論も射程に入れ、日本語の衰亡=日本文学の衰亡へと向かおうとしている現状に警鐘を鳴らす示唆に満ちた本。 学問とは何か。学問とは、「なるべく多くの人に向かって、自分が書いた言葉が果して<読まれるべき言葉>であるかどうかを問い、そうすることによって、人類の英知を蓄積していくもの」であり、「その本質において<普遍語>でなされる必然がある」ものである(p.144)。 中世までのヨーロッパでは、ラテン語を普遍語として学問が行われていた。それが近代になり国民国家の時代に入ると、普遍語を翻訳することにより各国が<国語>を作り、それぞれの<国語>により学問が行われるようにな