『シリコンバレーから将棋を観る』では、現代将棋のプロたちの世界とシリコンバレーとを重ね合わせた記述が多く見られる。これには、競争の中を生き抜いてきた人々に共通する雰囲気を将棋のトッププロたちが持っているという点もあるかもしれない。が、それよりも興味深いのは、現代将棋におけるイノベーションのあり方、進化の仕方にシリコンバレー的なものを見出している部分である。 本書では、「知のオープン化」の中で棋士たちが多様な手を互いに探索・共有している様が、現代将棋の今として描かれているが、この点だけを見れば、シリコンバレー的と言わずともたとえば日本のWebでも起こっていることではないか、と思うかもしれない。 確かに、オープンな情報共有による進化の速さは2ちゃんねるやニコニコ動画でもよくみられる。コンテンツが誰に帰属するか関係なくさまざまなパターンの探索がすごい速さで行われるところは、むしろ将棋以上であろう