近年、テレビや新聞、雑誌などで「大人の自閉スペクトラム症」が取り上げられることが増えました。実際、自閉スペクトラム症(以下、ASD:Autism Spectrum Disorder )は「10人に1人は抱えている」とも言われています。 ではASDとは、いったいどのような症状を言うのでしょうか。『大人の自閉スペクトラム症』を刊行し、職場での深刻な現状を豊富な事例とともに取り上げた精神科医・備瀬哲弘氏にお聞きしました。 ■自閉スペクトラム症は、もはやひとごとではない 筆者のところには“生きづらさ”を感じている人たちが多く診察に訪れます。そして生きづらさの原因を探し求める過程で、「ASD」に行き着く人が実に多いのです。 ASDとは「従来は自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症などを含む広汎性発達障害と包括されていた疾患を、知的レベルや特性に強弱はあるが、その基本的な特性によって連続している(ス