これはもう「風評被害」だ。といっても原発事故による放射性物質をめぐる「風評」の話ではない。 今、教育界の関心事のひとつは、来春から使われる中学校教科書の採択問題である。とりわけ横浜市の教育委員会が市立中学校149校の歴史と公民用として、育鵬社の教科書を採択したことは大きなニュースとなった。 育鵬社の教科書は、従来の歴史教科書を批判して平成14年から発行されている扶桑社のものを継承している。それが400万都市の横浜で一括採択されたからである。 だが採択までの道は平易ではなかった。育鵬社版と、やはり歴史教育の改善を求めるメンバーらが執筆した自由社の教科書の不採択を求める運動が全国で起きた。 言い分は「日本の侵略や植民地支配の加害を直視しない」などといったものだ。運動の中では「戦争の美化」「戦争賛美」という言葉が躍った。しかし両社の教科書を読めば、まるで見当違いの批判であることがわかる。 両教科