朴裕河著『帝国慰安婦』は、花や香をまとうように「和解」を唱えている。 遥かな声が遠い時間の彼方から向かってきて、読む人々を「赦し」という目標に駆り立てていく。穏やかで分かりやすい語り口。まるで外交官でもあるかのように、衣装を凝らして「心の礼儀」「平和的愛好」「情愛」をまとって〈同意〉を求めくるのだ。 日韓の「歴史問題」を難解なものとして避けていた人も、いつのまにか「すべてを知っている」という特権的な立場におかれて快適になってくるだろう。そうして、やがて「これこそが真実だ」と膝を打つことになるのだ。まるで観光旅行のガイドブックのようにありふれたことが次々と語れているのだから読み手は躓くことなく進むことができる。 書き手の肩書は、韓国「世宗大学日本文学科教授」である。日韓の歴史を俯瞰しているように書かれているので、「つつましい」日本人の多くは安堵し、そうして韓国の権威者と対等に「共感」している