李巌(李信)は、明末の農民叛乱の頃の人物。紅娘子の旦那と言ったほうがピンと来る人が多いかもしれない。河南省杞県の人で、郷試に及第して挙人となる。ときに明末の飢饉で窮民の救恤のために自家の食糧を放出し、県令に憎まれて獄に下された。紅娘子が県令を殺して李巌を救出。李自成に帰順してその参謀となり、「闖王(李自成)を迎えれば、税金を取らないぞ」の歌を作った。1644年に牛金星の讒言に遭い、李自成に殺されている。 李巌は『明史』流賊伝や『綏寇紀略』『明季北略』といった複数の史書に登場するため、ふつう実在するんだろと思うところ。 ところが顧誠『李巌質疑』『再談李巌問題』や欒星『李巌之謎』といった20世紀の実証史学によって、紅娘子が殺したとされる杞県県令って殺されていないよとか、明末の挙人に李信(李巌)なんて存在しないよとか、李巌物語の細部が否定されてしまい、挙げ句のはてには李巌とは李自成から派生した分