◇悔いのないよう理想を具現化 今年に入って、新人の演出家のデビュー作上演が相次いでいる。2000年入団の稲葉太地が4作目にして大劇場進出、03年入団の生田大和がバウホールで第1作を発表し、同期の原田諒がそれに続く。スターのみならず、作者も次々と新人を育てていくのが、宝塚が100年続くゆえんであろう。 私の場合、「二度と機会を与えられなくても悔いのないように」と、題材とスタッフを選んだ。サイレント映画の大スター、ルドルフ・ヴァレンチノの伝記をミュージカル化することにし、振り付けは宝塚は初めての新人に依頼した。 宮本亮次、後の宮本亜門その人である。彼の高校の卒業公演を見て、その才能に驚嘆して以来の付き合いである。当初3歳上の私は先輩面をしていたが、私が演出助手をやっている間に彼はダンサーから振付家へと着実に駒を進めていた。知り合って10年、「いつか一緒にミュージカルをつくろう」という夢は、実現