美術館からの帰り道、竹橋駅のホームでふと気づいたのは「私の見たものは写真ではなく、写真以外の何かだったのではないか?」という事だった。 ただ、「何か」がいまだによくわからない。 私はトーマス・ルフについてよく知らず、ウェブサイトで知りえるおおまかな情報位しか持ち合わせていなかった.現代写真家の写真展を気軽に見に行ったつもりだった。 会場に入ると人の背丈を越える巨大なポートレート写真が並ぶ.彼の初期の代表作「Porträts」。 証明写真の要領で同様に撮られた5枚の人物の肖像は、巨大に引き伸ばす操作が加えられる事で我々の良く知った「人の顔」ではない「別の何か」に変容を遂げている。巨大化した人の顔はシワがシワに見えず、眼球が眼球に見えない。 大画面TVで自分の顔より大きな顔を見たときに違和感や不快感を感じる人は多いのではないだろうか.しかしルフの示すサイズではそうした感覚をはるかに飛び越えてし
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