パスポートを返せ《前編》 外務省は理由をでっちあげ、海外取材を妨害した 国内に閉じ込められ、職を奪われた戦場記者の警鐘「すべての日本人に起こりうる」 常岡浩介 ジャーナリスト パスポート取り上げは、職を奪われるに等しい 愚かしい裁判に付き合わされて、もう1年になる。付き合わされているといっても、訴えたのは私で、相手は日本国だ。政府に不当に取り上げられたパスポートを取り戻すための裁判を続けている。 私は、テレビ局の報道記者を経て22年前にフリージャーナリストに転じてから、一貫して海外の戦争や紛争地の取材を職業としてきた。パスポートを奪われることは、職業を奪われたということなのだ。 現在、日々のニュースは新型コロナウイルスの話題が圧倒的だ。世界各地で人道危機が続いているのに、情報が不足している。特に、中東のイエメンは内戦で2000万人が飢餓の危機に直面し、国連が「世界最悪の人道危機」と位置づけ