防護服を着て遺棄化学兵器の処理作業の準備をする日本の専門家 =2002(平成14)年9月、中国・孫呉(AP) 発注者である内閣府の当事者能力の欠如と、政府の非公開主義により、聖域とされ“利権化”してしまった中国大陸での遺棄化学兵器処理事業。それが独占受注業者「PCI」グループの不正を誘発したが、そもそも事業はスタート前から不可解な経緯をたどっていた。関係者の証言などで明らかになった中国政府への100億超もの支出。その詳細を、日本政府も業者も明かさない。調べるほどに奇妙なのは、遺棄された兵器を処理する責任が真に日本にあるのか、その法議論を封じ込んだまま1兆円事業に突き進んだ歴代内閣の姿勢である。(編集委員 宮本雅史) 「日本に処理責任」→土下座外交の“成果”? 中国大陸に遺棄された化学兵器の処理が政治問題化した発端は、中国政府が平成2年に海部内閣時代の日本政府にその処理と解決を要請してきたこ