保守点検だけではない。エレベーター整備工の高橋智さん(53)は故障の知らせを受けると、大きな体を折りたたむように車のハンドルを握り、現場へと急ぐ。身長194センチの元プロ野球選手で、現役時代は「デカ」の愛称で親しまれた。生活を襲ったリーマン・ショック、3度にわたる転職……。子育てもマイホーム購入も、第二の人生からだった。【村上正】 「2人目の子でようやく目が覚めた」 全身をコバルトブルーの作業着に包む。頭には暗闇を照らす小型の懐中電灯付きのヘルメット。腰には事故防止のため、命綱のロープとフックからなる安全帯をつける。食べ盛りの子どもたちを養うため、エレベーター整備の仕事にたどり着いた。 「楽観的で、第二の人生を全く考えていませんでした。あわよくば日本球界で指導者になれると思っていましたが、相当甘かった。引退した年に長男は生まれたのですが、仕事の電話はほとんどかかってきませんでした。長男を寝