以下は私の演習に所属し、歴史学(日本史)で卒論を書こうとしている学生を念頭に置いておりますが、他の分野でも応用は可能だと思います。適宜ご活用いただければ幸いです。 1.まず押さえてもらいたいこと 史料と研究文献の違い 佐々木健一『論文ゼミナール』(2014年、東京大学出版会)で、論文のモラルに関する章で「テクストと参考文献」の区別が述べられている。この区別は「論文を書くうえで最も基礎的なもの」であるとされる。「テクストというのは、研究の対象になる著作や作品のことであり、参考文献とは、それについて既に書かれている先行研究のこと」である。さらに「研究の対象となるテクストと、それについてのひとつの「意見」である参考文献とを区別できない、ということは、書こうとしている論文というものの性質を間違えて考えている恐れが大いにあります」とも述べられている(p.110-111)。 歴史学において、この区別は