{注} 化学パルプは木材をチップ(小片)にし、薬品で煮て不純物を溶かし去ったもの。砕木パルプは木材を機械的に磨砕したもので、リグニンなど非繊維素分も入る。 もちろん私は上質紙を使った書籍だけを残そうと考えているわけではない。いちばん永く残るはずの上質紙ですら酸性抄紙によるものは問題があるという力点の置き方から「本を」としたのは事実だ。しかし実をいえば、人は子を残す、財を残す、名を残す—-のなかで、私はこの冊子を残したかったにすぎない。頁数は満たぬとも私の定義によれば本であった。残すことは創ることであった。さらに大方の失笑を買うことは承知のうえだが、本は木がなければ作れはしないことを、本という字を書いてみると実感できて好きだからでもある。後に紙業界の方から『森を残す』の本と言われたりして、私も救われている。『朝日新聞』での先延洋泰氏の「論壇」投稿記事では、校閲部員が社の方針を体して『木を残す