医学系書籍の現状と将来について講演する機会に、いくつかの提案をしたことがある。その時、特に重要性を強調したのは、良き書き手の育成である。売れ筋の医学系書籍をしらべてみると「トンデモ本」が並んでいて愕然とする。その理由のひとつは、まともな医学系書籍は面白くない、あるいは、面白く書ける人が少ないということにある。できれば「このようなオモロイ本を書けるような著者を育てるべきだ」と例をあげて話したかったのだが、あまり適当な本を思いつけなくて諦めた。その講演のすぐ後で、本書を読む機会があった。あぁ惜しい、タッチの差であった。この本を知っていたら胸をはって紹介できたのに。 この本、まず何しろ面白い。それだけでなくて、わたしのような医学研究者にとっても、知らないことが多くて勉強になった。著者はいったい何者なのかと、ビル・ブライソンがこれまでに書いた本を調べてみた。多くは旅行関係で、他には『人類が知ってい