日本の財政事情は、世界で最も深刻な状況にある。これに対し、国家は家計とは異なるのだから、心配する必要はないと論陣を張る政治家やエコノミストも存在する。財務省の前事務次官で神奈川大学特別招聘教授の矢野康治氏に話を聞いた。(聞き手 : ニッポンドットコム常務理事 谷定文) 矢野 康治 YANO Kōji 1962年生まれ。山口県出身。一橋大学卒。大蔵省入省、小樽税務署長、国家戦略室参事官、社会保障改革担当室参事官、内閣官房長官秘書官、主税局長、主計局長、財務事務次官など重要ポストを歴任する。退官後、神奈川大学特別招聘教授、日本生命保険特別顧問。 矢野氏は財務省きっての財政規律論者として知られ、歴代の政権幹部にも臆することなく直言してきた。次官在任中の2021年10月、月刊『文芸春秋』に寄稿した『財務次官、モノ申す「このままでは国家財政は破綻する」』では、自民党総裁選や衆院選をめぐる政策論争を「