通学路に、庭に植えてあるびわの実がなったら「ほうら」と、通り過ぎる小学生にくれていたおばあちゃんがいて、大人になって、用事があって戻った田舎の病院でバッタリ会った。 もちろん向こうはこちらの顔なんか、大人にもなっているしわからなかっただろうけど、こちらはなんとなくその顔を覚えていた、あぁびわの…って、食べ物の恨みは、とよく言うけれど食べ物に関したら恩だって忘れ難いのかもしれない。単に私が食いしん坊の欲張りなのかしれないけど。 ともかくニッコリ笑顔のおばあちゃんにぺこっと頭を下げたら、ん?という顔をしたので「昔、あの辺りにいらっしゃった、夏になると学校の帰りにびわをいただいていた、と思うんですが…」 「あぁ」さすがに一人一人は覚えていなくても、びわを子供らにあげていたことは覚えているようで、それに話し方も穏やかながらしっかりとして、あぁ、自分が子供の時は「おばあちゃん」と思っていたこの人が、