活字製造現場めぐり 書体設計士の仕事はたいへんだとつくづくおもう。 基本となる文字とはいえ「永」だけを2カ月近くかけて完璧に習得したとしても、「永」を1万個つくるのかというと、そうではない。同じ書体でも「一」「永」「山」では全然ちがう。1万字必要といわれれば、1万種類の原字を描かなくてはならないのが書体設計(デザイン)だ。 文字修業をしていた最初の数カ月間、橋本さんはもうひとつの修業も同時におこなっていた。原字は、それを書き上げれば製品として完成するわけではない。そこから彫刻用の型(パターン)をつくって鋳型(母型)をつくり、それを用いてつくられた金属活字が最終製品だ。さらにいえば、その金属活字で紙に印刷された文字が、読者の目にふれる最終形となる。いくつもの工程を経て、最終形にたどりつくわけだ。 「いくら原字が美しくても、金属活字の状態でよい形でも、印刷された紙面の状態で美しくなければダメな
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