第60話 辰砂と黒辰砂 辰砂を含む鉱石 黒辰砂(黒い結晶部分) 辰砂と黒辰砂 丹生産、全国に知られ 辰砂(しんしゃ)は顔料や防腐剤、水銀の原料として、世界中で古くから人間が利用してきた。硫黄と水銀の化合物(硫化水銀)で比重約8と、ずっしり重い。鉱物の硬さを示すモース硬度は2~2.5で軟らかい。条痕色(粉末にした時の色)は濃赤色だ。 黒辰砂も辰砂とともに水銀をとる鉱石として採掘されてきた。化学組成は辰砂と同じだが結晶構造が異なり、条痕色は黒色となる。 辰砂の名は、中国の辰州(現在の湖南省)から多く産出したことに、英名のCinnabarはギリシャ語のkinnabaris(赤い絵の具)に由来するという。辰砂は赤い色から朱砂、純粋なものは丹(たん)と呼ばれ珍重されてきた。細かく砕いても鮮やかな赤い色が保たれ、古来神聖な赤色顔料として好んで利用し、時には高価な漢方薬の原料になった。また空気中で400