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「河原の石ひとつにも宇宙の全過程が刻印されている」。レイテの戦地で戦友に聞いたこの言葉をきっかけに、戦後石の蒐集を始めた男の物語。戦争の記憶と石の記憶が交錯し、徐々に男は、世間に背を向けて石の世界にのめりこむようになる。男の意識が石に凝縮されるのと反比例するように、男を取り巻く世俗の影は薄まり、とうとう妻は狂い、二人の息子も死に至る。石の持つ、一種魔術的な力を描いていて、背中が一瞬ぞっとする魅惑的な石狂い小説。 石の愛し方で、ロジェ・カイヨワの右に出るものはいないのではないかと思う。この本に収められている石についての文章は、どこをとっても石に対する並々ならぬ愛情であふれている。でも、決して愛に溺れてはいず、石の硬さに負けぬほどの硬質な視線で石を眺め、石が経てきた時間に負けぬほどの密度の濃い思索を反映する。冷静に、冷静に、言葉を積み重ねていく仕草は、壮大な芸術に向けられたものであるようにも思
Tweetぎょうせい「悠」 2002年 掲載 『かわらの小石の図鑑 日本列島の生い立ちを考える』 (千葉とき子・斎藤靖二 著/東海大学出版会) 地質学の基本は地質調査である。 かわらに転がっている普通の小石を、豊富な図版で解説する『かわらの小石の図鑑』を手に取ったとき、大学での卒業論文時のフィールドワークのときの出来事を思い出した。 私の卒論のフィールドは岡山県の山の中で、カキや二枚貝の貝殻のかけらが集まってできた石灰岩の分布状況を調べること、そして地質図を作ることが、取りあえずの課題だった。 まず、自分のフィールドにどんな種類の岩石が分布するのかを把握しなければならない。 指導教官と一緒に山を歩きはじめて一日目が終わろうとしたころ。教官はスッとかがんで、1センチほどのごく小さな小石を何個か拾って私に突きだした。 「これがこのフィールドに分布する岩石だから、まずこれを肉眼で区別できるよう
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