詩に詠われる蘇小小は南朝斉の有名な歌妓であった。ここに登場する蘇小小は、死んでもなお想い人を待ち続ける哀れな亡霊となって描き出されている。詩自体はあくまで美しく幻想的だが、昏く重い。この幻想と怪奇、耽美と死こそが李賀が昏い情熱を傾けたテーマであった。なお、詩題を『蘇小小の墓』とするテキストもある。 李賀の詩にはしばしば鬼(日本における鬼ではなく、死者の魂、すなわち亡霊をいう)や奇怪な生き物、妖怪、超常現象が描かれる。それらは李賀以外にもまったく見られないわけではない。例えば陶淵明は『山海経を読む 十三首』にて古代神話に登場する妖怪のことを詠んでいるが、その本意は百鬼夜行のごとき人間社会の風刺・批判にあるがごとく、一種の喩えであったり、詩にインパクトを与えるテクニックにすぎない。対する李賀の場合、その亡霊・妖怪の類は詩中に必然を持って頻々と登場したり、往々にして怪異きわまる現象そのものが詩の
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