「無」のひとつのかたちである「真空」。物理学の世界では、大気圧よりも圧力が低い状態と定義されますが、古くより人々は「何もない空間」についての思いをめぐらせてきました。古代ギリシアではデモクリトスが真空の存在を主張し、アリストテレスはそれを否定したうえで、後に真空嫌悪(horror vacui)と呼ばれることになる考えを残しました。 近代以降、実際に真空状態がつくれるようになってからは、真空技術は科学、産業、医療、とさまざまな分野を支えてきてました。例えば、病院でレントゲン撮影ができるようになったのも、エジソンが電球を発明できたのも、お茶の間に万国博覧会の映像が流れたのも、魔法瓶の中のお茶が冷めないのも、宇宙の仕組みが少しずつわかってきているのも、真空技術のおかげなのです。 この展示では、真空の科学的な基礎から歴史的な背景、わたしたちの日常への関わり、また、現在東京大学で行われている真空を用