応力ひずみ集中部から欠陥等を起点とするき裂が急激に伝播する破壊形態を脆性破壊という。比較的低温・低応力で脆性破壊が生じる場合には,その破断面は末広がりのシェブロン模様を呈し,結晶粒のへき開破壊のため銀白色のキラキラした光沢を呈しており,板厚の減少はほとんどない。 過去には,脆性破壊事故により重大な人的・物的損害が起きている。特に,第2次世界大戦中に米国で建造された全溶接標準船が多数,溶接箇所などの切欠応力集中部から脆性破壊を起こした事例は典型例として有名である。 脆性破壊が生じるとその被害が大きな損傷事故につながる可能性が高いことから,その防止対策を行うことは溶接構造物の健全性の観点から欠くことができないと考えられる。 脆性破壊が発生するには, (1) 応力集中をもたらす原因,特にき裂状の欠陥が存在していること。 (2) 引張応力が存在していること。 (3) 使用材料の使用温度(特に延性―