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ブックマーク / hankinren.hatenadiary.org (5)

  •  333メートルの里程標 - 花房観音  「歌餓鬼抄」

    東京という街は現実には存在しない街だと永い間わりと気で思っていた。テレビの中にしか存在しない街だと。今でもふとそんな気がする。 初めて東京へ行ったのは中学校の修学旅行。それから大学生の時に2度か3度、友達を訪ねて行った。そしてその後、10年以上その地に足を踏み入れることはなかった。 京都の狭いアパートの一室で、1人の男に狂い支配され箱庭のような閉鎖的な「現実」の中で早く誰か私を殺してくれないだろうかと思いながら永い月日を過ごしていた。お金も無かったけれどもそれ以上に私はここから一生出られない、どこにもいけないのだと、死によって解放されることだけを願い続けていた二十代だったから、テレビに出てくる東京なんて街には二度と行くことはないだろうと思っていた。 私の「現実」は、その狭い空間での1人の男との借金まみれの憎しみ合いながらも執着する未来の無い生活だけだった。 あの日々を語るのなら「

     333メートルの里程標 - 花房観音  「歌餓鬼抄」
  •  破滅の物語の終焉 ―「毎日かあさん 4巻 出戻り編」 著・西原理恵子 ― - 花房観音  「歌餓鬼抄」

    毎日新聞に連載されている西原家の日常を綴った「毎日かあさん」の1、2巻は、読み終えた後で妹に貸したので今手元に持っていない。 私の末の妹は結婚して子供が2人いる。上が男の子で下が女の子。あんたんちと一緒だから、読んでみたら? と言って手渡した。 妹は、高校を卒業し推薦で短大に入り卒業して地元に戻り堅実な職に就き、その職場で知り合った温厚な男性と結婚して2人の子供を生んだ。 私はこの妹とは仲が良いのだけれど、彼女に対して劣等感がある。女の幸せは結婚して家族を作るものだと言う価値観の中で育ったのに、それが出来ないどころかいつも何もかもが破綻するような選択をしてしまい周囲の人間に多大なる迷惑と心配をかけ続けてきた私は、堅実な「親の望む理想的な」人生を歩んでいるかのように見える妹を見ていると自己嫌悪に陥ることがある。 彼女は、そういう私に「お姉ちゃんは、(中退だけど)いい大学入ったり、よく読んで

     破滅の物語の終焉 ―「毎日かあさん 4巻 出戻り編」 著・西原理恵子 ― - 花房観音  「歌餓鬼抄」
    whalebone
    whalebone 2007/07/22
    『死にたい人間が、生きる為に何かを創ろうとする。』『死にたい人間こそがモノを創ろうとしているのかもしれない。~卑怯な死神から逃れる為に何かを必死で創ろうとしているのかもしれない。 』
  • 優しい恋人 - 花房観音  「歌餓鬼抄」

    友人が、「死にたい」と言ってきた。何故死にたいのか聞くと、「将来が不安で、生きていたくない」と言う。 一日に何度も、死にたいと思うそうだ。でも、自殺する勇気は無いので、どうか楽な方法で事故で死ねないだろうか、と考えているらしい。 将来の不安、それは誰もあるよ、と簡単には言えない。実際に、そのことが原因で自殺する人間はあとを絶たないのだから。 私も、フっと気を許すと、絶望が入り込むことはあるよ。ちょっとした心の隙間に、絶望が入り込んで、体も心も犯す。だから、気を許さないように、楽しいものを見つけて、欲望を糧にして、生きるようにしている。ニュースを見ても、絶望したくなるニュースばかりだ。これからどうなるんだろうか、この国は、もっともっと悪くなっていくとしか思えない、と、不安になる。 そして何よりも彼女を不安にしているのは、来なら彼女の心の支えになるべき彼女の「恋人」の存在だ。彼女の恋人は、彼

    優しい恋人 - 花房観音  「歌餓鬼抄」
  •  AV女優・森下くるみ『すべては「裸になる」から始まって』 - 花房観音  「歌餓鬼抄」

    画面の向こうで裸になり、セックスをする女達。彼女達の仕事は、「AV女優」。 私はAVを見る。「男の欲望」の為に作られたアダルトビデオを見る女だ。誰かに頼まれて見ているわけでもない。仕事で見ているわけでもない。自分の意思で見ている。お金を出して購入し、アダルトビデオを見ている。 女がAVに何を求めるか、何を見ているか。それは人それぞれだろう。男優に欲情しながら見ている人もいるだろう。性的幻想を映像化する創り手である監督に焦がれて見る人もいるだろう。女優に自分を投影して見る人もいるだろう。ただただ、そこで繰り広げられる性の世界に羨望しながら見る人もいるだろう。 女がAVを見ているというと、女優に自分を投影して男優に「AVのようなことをされたい」から見ているのだろうと捉えられて戸惑うことがある。それを否定はしないけれども、私はどちらかというと男優になり、女優とセックスしたいという欲望の方が強い。

     AV女優・森下くるみ『すべては「裸になる」から始まって』 - 花房観音  「歌餓鬼抄」
  • この胸の痛みも、いつかは - 花房観音  「歌餓鬼抄」

    葉書の整理をしていた。その中に、結婚を知らせる一枚の葉書を見つけた。私は恐々と、その葉書を手にした。そこには平凡な一組の夫婦の写真があった。私は、ずっと、相当永い間、この葉書を正視することが出来なかったのだ。その葉書が来た時に、その二人が結婚することはわかっていたけれども、自分でも思いがけないほどの衝撃を受け目の前が真っ暗になった。 何故衝撃を受けたのか。それは、その夫婦の男の方が好きで、女に嫉妬して、、、、と、いう単純な話とは、ちょっと違う。私は、その女が嫌いだった。憎んでいたと言ってもいい。大嫌いだった。憎んでいることに気付かず、しばらくの間「友達」のフリをしていた時期もあった。 その女は「いい人」で、皆に好かれているように私の目には見えた。いろんなことが、人より「ちょっと駄目」な所も、「ちょっと駄目だけど一生懸命な頑張り屋さん」な所も、「無邪気で純粋」な所も、完璧じゃないからこそ好感

    この胸の痛みも、いつかは - 花房観音  「歌餓鬼抄」
    whalebone
    whalebone 2007/04/01
    ”自分自身に対する憎しみ”
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