東京という街は現実には存在しない街だと永い間わりと本気で思っていた。テレビや本の中にしか存在しない街だと。今でもふとそんな気がする。 初めて東京へ行ったのは中学校の修学旅行。それから大学生の時に2度か3度、友達を訪ねて行った。そしてその後、10年以上その地に足を踏み入れることはなかった。 京都の狭いアパートの一室で、1人の男に狂い支配され箱庭のような閉鎖的な「現実」の中で早く誰か私を殺してくれないだろうかと思いながら永い月日を過ごしていた。お金も無かったけれどもそれ以上に私はここから一生出られない、どこにもいけないのだと、死によって解放されることだけを願い続けていた二十代だったから、テレビや本に出てくる東京なんて街には二度と行くことはないだろうと思っていた。 私の「現実」は、その狭い空間での1人の男との借金まみれの憎しみ合いながらも執着する未来の無い生活だけだった。 あの日々を語るのなら「