この本は次のような動機で書かれている。 筆者には苦い経験がある。財務省のおエラい方々を前に、「子どもの貧困」についての講演をさせていただく機会があった。私は切々と、いかに子どもの貧困が広がっており、いかに貧困の子どもがたいへんな状況にあるかを訴えた。しかし、私の長い訴えをじっと聞いていた一人の官僚に言われたのである。 「阿部さん、わかりました。では、何をすればよいのですか。具体的に、どのような政策を打てば子どもの貧困は解決するのですか。それがわかれば、私たちだってお金をつけますよ」 その時、言葉が出なかった。それが今でも悔しくてたまらない。私がこの本を書く情熱の源は、この時の悔しさにある。 残念ながら、五年たった今でもその問いに対する決定的な答えはない。 (本書「はじめに」iii) これは、ぼく自身も似たような経験がある。 子どもの貧困に対する自治体の政策的対応をどうすればいいか尋ねられる