死は生の対極ではなく、まぎれもなく生に内包された概念である。それでも我々は、豊かに生きることに精いっぱいで、「豊かに死ぬ」ために必要なことを、あまりにも知らない。かつてないほど長生きをするようになった現代社会だからこそ、見落としてしまうことの数々。現役外科医にして「ニューヨーカー」誌のライターでもある著者ガワンデが、「生と死の狭間」の意味を痛切に問いかける。(HONZ編集部) 『死すべき定め』は人を変える ガワンデの本の翻訳を手がけるのはこれで2冊目である。『医師は最善を尽くしているか』(みすず書房、2013年)のときのあとがきに私はこう書いた。 初校を校正しながら、私は読まされた。読まされるという感じで、ついつい先はどうなるかと読みた くなるのである。すべては自分が翻訳した自分で書いた文章である。先がどうなるかも知っている。 なのに読みたくなる。 今