安倍晋三元首相の救命処置にあたった際の状況について、現場付近で振り返る医師の中岡伸悟さん=奈良市で2023年6月29日、久保玲撮影 AED(自動体外式除細動器)は動かなかった。けいれん状態の心臓を正常に戻す装置が反応しないことは、心停止を意味する。1年前のあの日。向き合ったのは安倍晋三元首相(当時67歳)だった。 悲鳴と怒号の現場へ 「『とんでもないことが起きた』と直感し、スマートフォンも持たず白衣を着たまま飛び出しました」 2022年7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で演説中だった安倍氏が銃撃されて死亡した事件。現場で救命処置にあたったクリニック院長、中岡伸悟さん(65)が毎日新聞の取材に応じ、切迫した当時の状況を語った。 その時は突然訪れた。 「安倍さんが撃たれた! 先生、早く行ったって。早く!」 午前11時半過ぎ。駅前ビル3階に入る「中岡内科クリニック」の自動扉が開き、駆け込んでき
