前回では、日本で肉用に生産されている牛の割合を見ていただいた。肉専用品種の中で黒毛和牛が突出して多く生産されており、それ以外の和牛品種は比率でいえば1%以下と、誤差程度でしか存在していない寡占状況にあることがわかったと思う。 なぜそのような状況になってしまったのか。 「それはもちろん、黒毛和牛がいちばんおいしい和牛だからでしょう!?」 そう思われる人も多いだろう。黒毛和牛は確かに世界で類を見ないおいしさの要素を持つ、優れた和牛だ。しかし日本最大の頭数規模を誇る肉専用種になったのには、もう少し違う意味がある。 最初に断っておくが、筆者は黒毛和牛も大好きだ。ことにサシの量が適切で、赤身部分にもしっかり味わいと香りがある黒毛和牛は、ほかの品種では味わうことができないおいしさを持っている。 しかし、嘆かわしいことだが、ちまたにあふれている黒毛和牛の肉の多くは、先に書いた味わいや香りを持たず、おいし