―私の右上腕には、大きな火傷跡がある。 ―私の大陰唇は、黒くてぷっくり膨れていて可愛い。 ―私の肌は、アトピー治療のステロイド剤と共に生きてきた。 ―私の眉は、いつも思うように描けない。 ―私の胸は、子どもの頃から何度も見知らぬ人に鷲掴みにされ、19歳の時には暴言の受け皿になった。私の胸は、好きなスポーツをするたびに揺れて邪魔で、亡き祖母のように垂れ始めていく。 ―私の胸は、明確に同意した関係の中で、新宿駅前や京都の交差点で愉快に揉まれることがある。私の胸は、「あなたに触れていると自分の身体も好きになる」と告げられる時の接続地となり、あなたの身体を移ろう。私の胸は、下着屋のお姉さんにやさしく触られるたびに少しだけ汗ばむ。私の胸は、肉体の規格に合う形のブラジャーに包み込まれると、過去の痛みなど気にも留めず単なる身体の一部として内側におさまっていく。すると、ようやく、この身体は私だけのものであ