きみ子は昨晩見たUFOの話をした。 「タイになんて来だもんだから、暑くって頭さおかしくなっだんだ」 とぐちるように言うと、沙苗は少し考えたあと「お母さん、それってもしかして……」と言いながら慌てて席を立った。 こちらの苛立ちや怒りに気付いていないのか、そんなものは分かっていて気付かぬふりをしているのか、きみ子には分かりかねた。 一方、沙苗がいなくなって、きみ子と二人で取り残されたソムチャイは緊張し、テーブルを見つめたまま動かなかった。テーブルの下で落ち着きなく足を揺すっているせいで、グラスの水が揺れていた。 しばらくしてウェイターがきみ子の前に皿を置いた。色鮮やかなマンゴーの横に赤や緑に色の付いた餅米が添えられていた。 「マンゴーライスです。タイのデザートなんです」 ソムチャイはこれだけ言ってひと息に水を飲んだ。 「おいしいんですよ」 ソムチャイは念を押すように言ったが、きみ子はため息をつ
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