水がきれいになり過ぎて、魚が住めない?――。 瀬戸内海で魚介類の漁獲量が減り続け、漁師らから、こんな声が上がっている。水質改善が進んだことで、植物プランクトンを育てる窒素やリンなどの「栄養塩」が減り過ぎたことが一因と分析する研究者もおり、国も実態解明に乗り出した。 ◆「もうけがない」 関西空港に近い泉佐野漁港(大阪府泉佐野市)。瀬戸内海での8時間の底引き漁から戻ってきた男性(38)は、浮かない表情を見せた。この日はカレイやヒラメ、エビなどが取れたが、数はどれも少ない。 「10年前は1日に7~8万円分の水揚げがあったのに、今は2万円程度。船の燃料代も高いし、ほとんどもうけはない」 農林水産統計などによると、瀬戸内海の漁獲量は1982年の46万トンをピークに減少し、2010年は17万5000トンまで落ち込んだ。80年代に比べ、カレイ類が2分の1、イカナゴは6分の1に。アサリ類は約190分の1に