バランスが悪い?秀逸な映像作品の数々 筆者にとって本展は久しぶりに見る刺激的で清涼感を味わうことのできる展覧会だった。同時に思ったのは、これは日本では実現不可能だろうということだ。 まず形式的なことをいうならば、映像作品が多い。それもかなりの長さである。本展のキーとなる作品の一つであるリュウ・チュアンの《ビットコイン・マイニングと少数民族のフィールドレコーディング》(2018)は40分だ。前回に続き本稿で紹介している作品は全て映像または映像インスタレーション作品で、他にもシンガポールを代表するアーティストの一人ミン・ウォン(黃漢明)による自身が他者に「扮する」ことによって歴史との接続を試みる作品や、日系ペルー人アーティストのマヤ・ワタナベ(渡邊麻耶)による地震の前後に水槽の中で起こるドラマに焦点を当てた映像インスタレーションは、強い印象を放っていた。 マヤ・ワタナベ《地震》2017 それに