ゴヤは「わが師は自然とベラスケス(とレンブラント)」といい、マネは「ベラスケスこそ画家のなかの画家」と語り、ピカソはベラスケスの絵をじつに58枚も模写したという。誰もが一目も二目も置く画家、ベラスケス。その代表作が《ラス・メニーナス》である。 世界3大絵画にも数えられる名作中の名作。プラド美術館2階中央展示室に飾られるこの絵の前には、いつも世界中から訪れる人たちで人だかりができている。ルカ・ジョルダーノが「絵画の神学」とまで讃えた、絵画芸術の一つの到達点と見られている至宝である。 ところが、それほどのリスペクトをほしいままにしているにもかかわらず、意外なことに「どういう場面が描かれている絵なのか」というごく基本的なところが謎となっている。画面左側で絵筆を手にしている男性がベラスケス自身である。彼はいましもパレットの絵の具を筆ですくい上げ、イーゼルに立てかけられた巨大なキャンバスに次なる一筆