2.学力とメリトクラシー:地位の配分と社会統合 学校での学力の形成を支えている原理は、メリトクラシーである。メリトクラシーとは、もともとは、生まれや身分によって地位が決定された前近代社会から個人の業績(メリット)によって地位が決定される近代社会への転換によって広がった原理である。それは、生まれや身分によってではなく能力と業績によって社会的な地位が諸個人に配分されるという、近代的社会編成原理を指す概念として用いられてきた。しかし20世紀以降になると、メリトクラシーは、単なる個人の業績にもとづく地位配分という原理にとどまらず、そのような人材の地位配分を人々が正統なものとして受け入れ、それによって社会に包含されるようになるという、平等化と社会統合の機能を有するものとしても、とらえられるようになった。 学力という言葉は、このような地位配分と社会統合というメリトクラシーの二つの機能を併せ持つものとし