朝日ソノラマのソノラマ文庫は,自社の単行本叢書の文庫化を企図して1975年に創刊を果たし,2007年まで存続した若年層向け文庫レーベルである.本稿では,ソノラマ文庫の創刊から全盛期に至る1970~80年代を射程に,同文庫が「ライトノベルの一源流」と見なされる特質をどのように形成したのかを明らかにしていく.また,とりわけ1980年代後半の動向をもとに,ソノラマ文庫の戦略面における課題とは何かに焦点を当て,その考察を試みる.
平素はMF文庫Jをご愛読いただきありがとうございます。 MF文庫J『恋と呪いとセカイを滅ぼす怪獣の話』(2022年10月25日発売/さがら総 著)におきまして、新潮文庫nex『いなくなれ、群青』(2014年9月1日発売/河野裕 著/株式会社新潮社)との一部本文の一致を確認いたしました。 本件に関連し読者の皆様をはじめ、河野裕様、株式会社新潮社のほか関係者各位には、多大なるご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。 本件の該当部分、発生経緯につきましては、以下に記載いたします。 -------------------------------------------------------- ◆該当箇所 ---------------------------- 『恋と呪いとセカイを滅ぼす怪獣の話』 207ページ 2行目~4行目 陽はずいぶん落ちていた。空の低い位置が、鮮やかな赤に染まる
取材・文/白鳥士郎 伏見つかさが『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を出版した時の衝撃は、今もありありと思い出すことができる。 (画像は『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』より) 読む前から面白さが伝わってくるタイトル。簡潔で読みやすい文体。スッキリと整理された、しかし魅力と特徴に溢れるキャラクターたち。そして実在のブログを作中に登場させ、発売に合わせそこでインタビュー記事を掲載するという宣伝手法。 ラノベにおける学園ラブコメというジャンルが、2008年8月10日という1日を境にして、激変したかのようだった。 ラノベ作家や編集者たちは『俺の妹』の成功にあやかろうと、似たようなタイトルの作品を大量生産した。 『俺の妹』の凄さは、それまでラノベに興味のなかった層を取り込んだことにある。 結果的にラノベ界は空前のラブコメブームに湧くことになった。 その1年後の2009年8月。 ラノベ界に新たな激
どれくらい増えたのか? まずはライトノベルのアニメ化作品一覧 - Wikipediaをもとに、2010年以降のラノベアニメの年間作品数を数えてみました。「テレビアニメ」しか数えていないので劇場版やOVAは除外です。ちなみに「新作」というのは要するにシリーズ二期とか三期とかを除外した数です。2022年の数値はこれから始まる秋アニメの数も加算しています。数え間違いがあったらごめんなさい。 年 ラノベアニメ作品数 うち新作 2010年 13作品 12作品 2011年 19作品 18作品 2012年 25作品 19作品 2013年 31作品 22作品 2014年 27作品 19作品 2015年 27作品 21作品 2016年 19作品 15作品 2017年 21作品 18作品 2018年 26作品 19作品 2019年 23作品 19作品 2020年 19作品 13作品 2021年 35作品 25
取材・文/白鳥士郎 「俺には自分の作品が無い」 薄暗いタクシーの後部座席で男が放ったその言葉に、耳を疑った。 何も言えなくなった私を血走った両目で見ながら、男はもう一度こう言った。 「俺は代表作が無い。ロードスみたいなものは、ラノベじゃあ書けなかった。だから俺は歴史小説を書く。新しいジャンルで勝負する。だから、お前は……!」 肩が触れ合うほどの距離で何度そう言われても、自分の耳を信じることができなかった。代表作が無い? 何を言っているんだこの人は? だってあなたは……あかほりさとるじゃないか。 あかほりは膨大な作品に携わってきた。 『NG騎士ラムネ&40』『セイバーマリオネット』『爆れつハンター』『MAZE☆爆熱時空』『天空戦記シュラト』『サクラ大戦』『らいむいろ戦奇譚』『MOUSE』『かしまし ~ガール・ミーツ・ガール~』……挙げればきりがないほどだ。 その同じ夜。 私はもう一人の男と並
メディア芸術領域の現状をより深く、広く伝えるため愛称を「MACC」とし、総合的な広報用ウェブサイト「メディア芸術カレントコンテンツ(MACC)」として令和5年2月13日リニューアルオープンしました。 (https://macc.bunka.go.jp/) 当サイトは、これまでの記事をアーカイブとして掲載しています。 「ライトノベル」というジャンルはここ20年でますます拡大しているが、その特徴として欠かせないもののひとつがイラストレーションではないだろうか。そんなライトノベルの表紙イラストレーションの系譜をたどっていく本コラム。前編では、ライトノベルの起源と目されることも多いジュブナイル小説をはじめとした小説が、マンガ・アニメと接近していく過程を追う。 天野喜孝による『グインサーガ 20 サリアの娘』(栗本薫著、早川書房、1985年)の装丁画 天野喜孝『天野喜孝 想像を超えた世界』パイインタ
「電撃文庫朗読してみた」(朗読/早見沙織) 「6月24日は全世界的にUFOの日」その言葉から、浅羽直之の「UFOの夏」は始まった――。 『イリヤの空、UFOの夏』 好評発売中 著/秋山瑞人 イラスト/駒都えーじ 夏休み最後の日、せめてもの想い出にと学校のプールに忍び込んだ浅羽の前に現れた先客、手首に金属の球体を埋め込んだその少女は「伊里野加奈」と名乗った。 おかしくて切なくて、どこか懐かしい――ちょっと“変”な現代を舞台に贈るボーイ・ミーツ・ガールストーリー。 ▼作品詳細や購入はこちらから! 『イリヤの空、UFOの夏』作品ページ https://dengekibunko.jp/product/iriya/301806000841.html ▼電撃文庫・電撃の新文芸 公式サイト https://dengekibunko.jp/ ▼電撃文庫 公式Twitter https://twi
『ゲーム小説』の一読者視点からのアレコレ【前編・80~90年代コンピュータRPGの時代】 公開日:2021年4月30日センセイ (べ・一文字) 読者の皆様は「ゲーム小説」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか? ここで元祖はどうとか本家はどうとかいう話を始めると様々な異論反論が入り乱れてかつライトノベルの定義がどうこうとか余計な方向からの流れ弾も飛んできて宗教戦争かくやと言うペンペン草も生えない焦土状態になる事は火を見るより明らかと思いますので、あくまで個人的な体験・経験則を元に語る「ゲーム小説の蘊蓄」が今回の題材と言う事でお願いします。かつ、文中敬称略です。 まぁそう言った前置きと言うか逃げを打った上でも、現在まで続くライトノベル史の起点とも言うべきタイトルとして『ロードス島戦記』(著・水野良/角川書店(現KADOKAWA))を外す事は出来ないと思います。 元々は『コンプティーク』誌に連載さ
直木賞や本屋大賞で候補になる作品だけがベストセラー小説ではない。ライトノベルの世界には、関連書籍を含めた世界累計が3000万部を超える鎌池和馬「とある魔術の禁書目録」シリーズや、2000万部に及ぶ伏瀬「転生したらスライムだった件」といった人気シリーズがごろごろしている。 飯田一史による『ライトノベル・クロニクル2010―2021』はこうした、"大人"たちがワイドショーやニュースで取り上げないラノベの現況を教えてくれるガイドブックであり、同時にスマホの普及やボカロの台頭といった状況が、ラノベ好きですら追い切れない変化をジャンルにもたらしている様子を露わにした研究書だ。 ジャンルとしてのラノベには現在しかない――『ライトノベル・クロニクル2010―2021』に登場するこの言葉が、ライトノベルというジャンルの傾向を、的確に捉えている気がしてならない。時雨沢恵一『キノの旅―the Beautifu
アニメでも大人気の「なろう系」小説 1月から放送されているテレビアニメで、『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』、『俺だけ入れる隠しダンジョン』、『蜘蛛ですが、なにか?』が好評を博している。これらはもともと、小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿された作品を原作としている。 この他にも、第2期が放送中の『転生したらスライムだった件』、『Re:ゼロから始める異世界生活』や、『回復術士のやり直し』、『ログ・ホライズン』など、「小説家になろう」発の「なろう系」小説が近年次々とメディアミックス展開されている。 一見、すべて同じ「異世界転生」ものに見える「なろう系」小説だが、実はそのトレンドは大きく変化している。その背景には、ユーザーである読み手、書き手の戦略や嗜好が深くかかわっているのだ。 共通するのは「RPGの世界観」 冒頭で挙げた作品の多くは、ダンジョンを探索してモンスターを倒すようなゲーム
『無職転生』のアニメが好評である。 このアニメのために新しい制作会社まで立ち上げたという気合の入りようで その美麗な作画と丁寧な翻案には原作ファンからも称賛が集まっている。 その評価とともに、 「無職転生こそなろう系の元祖である」 「無職転生が異世界転生のテンプレを作った」 といった言説が広まりつつある。 これは本当なのだろうか? 結論から言えば誤りである。 『無職転生』が「なろう」に投稿されたのは2012年11月だが、 これは『魔法科高校の劣等生』や『ログ・ホライズン』が書籍化されて人気を博し、 ヒーロー文庫が創刊されて「なろう」からの刊行ブームが始まったあとのこと。 「なろう」というウェブサイトが飛躍的な拡大を迎えていた頃であり、 いわば「黎明期の終わり」あるいは「成熟期の始まり」というタイミングだった。 そして、その頃には既に多くの「なろうテンプレ」が出揃っていたのである。投稿日タイ
文・写真:吉村智樹 塩田武士(しおた・たけし)小説家。 1979年 兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒業後、神戸新聞社に入社し、2012年まで10年に亘り新聞記者を続ける。10年『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞を受賞し、小説家としてデビュー。19年『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞。代表作は昭和最大の未解決事件を扱い映画化もされた『罪の声』。著作に『騙し絵の牙』『女神のタクト』『ともにがんばりましょう』『拳に聞け!』などがある。 Facebook アニメに開眼、新しい扉が開いた ――新刊『デルタの羊』はアニメーション制作現場の様子が生々しく描写されていますね。「本当の話なのかな?」と思うほど、アニメを愛するクリエイターたちの想いが現実味を帯びて伝わってきました。 『デルタの羊』を書くために「鬼滅の刃」のプロデューサーであるアニプレックスの高橋祐馬さんや、「ポプテピピッ
シーリムで暮らしていたときから本は好きだった。シーリムは現代日本のようなすぐれた印刷技術と物流をもった世界ではない。国に一つだけある図書館を出入りできる者は限られていたが、俺の場合、特別な許可が与えられていた。 王都壊滅の危機を救った際の報酬として、本の閲覧許可を求めたのだ。その程度の報償では波風が立つと言われ、爵位を与えられたが、面倒なだけだった。 力が覚醒する前の俺は忌み子としてあつかわれていたから、村でいつも一人で過ごさなくてはいけなかった。そんなときに心の支えとなったのが英雄達の冒険譚だ。大昔の偉大な英雄たちの伝承はいつも俺に生きる希望を抱かせてくれた。知恵と勇気で苦難を乗り越え、最後には人々を救って賞賛を手に入れる。そういう剣と魔法の話が好きだったから、今もよく読んでいる。スマートフォンで。 「なあ、ちょっとお前、立ってみて」 スマートフォンでネット小説を読んでいたら声をかけられ
『ロードス島戦記』の歴史~黎明編。伝説はコンプティークでのTRPGリプレイ から始まった 文 電撃オンライン 公開日時 2020年05月20日(水) 17:00 最終更新 2020年10月20日(火) 01:00 『ロードス島戦記』は、日本発の壮大なファンタジー作品です。呪われた島“ロードス”を舞台に、若き戦士・パーンや、“帰らずの森”の美しき女エルフ・ディードリットをはじめとする若者たちが冒険を繰り広げ、やがてロードス島の歴史をも動かしていく活躍を描きます。 1988年に作家・ゲームデザイナーの水野良氏による小説版(角川文庫→角川スニーカー文庫)が刊行されて以降、アニメ版やゲーム版の発売などメディアミックス展開も行われ、日本におけるファンタジー作品の草分け的な存在として人気を集めました。 このように30年を超える歴史のあるシリーズですが、2019年8月には人気キャラ・ディードリットも登場
2007年の創刊以来、長らくご愛読いただいた雑誌『電撃文庫MAGAZINE』ですが、本号(2020年5月号)をもちまして、休刊させていただくことになりました。 『電撃hp』を引き継ぎ、12年もの間、電撃文庫の最新情報を深く楽しい記事にして、お届けしてまいりましたが、 読者のニーズが多様化し、またスピーディーな情報提供が求められる現在、雑誌としての役目を終えたと判断いたしました。 これからは新たなカタチのメディアを模索しながら、Web、SNSを中心に、電撃文庫の情報を発信していきたいと考えています。 皆様から長年にわたり、ご愛顧をいただきましたことを、この場を借りまして、心から厚く御礼申し上げます。 誠にありがとうございました。 電撃文庫、電撃の新文芸、メディアワークス文庫など電撃レーベルにおきましては、今後とも変わらぬご支援、ご声援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。 電撃文庫MAGA
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