平成22(2010)年11月1日、ロシア・メドベージェフ大統領が北方四島の1つ、国後(くなしり)島を訪問して以来、ロシア閣僚の北方領土視察が相次いでいる。本年2月にも、セルジュコフ国防相が択捉(えとろふ)島、国後島を視察している。 一方、我が国は、4島一括返還、2島先行返還などと国内向けの建前の論議を繰り返し、大臣が代わるたびに訪れる根室半島の納沙布(のさっぷ)岬から、北方領土を遠望し、「認識を新たにした」と言っているだけである。 戦後、65年以上にわたって、北方領土返還に向け採ってきた施策に事実上何ら成果がなかった。既成事実が積み重ねられてきただけである。領土問題は、我が国の主権に関わる最も基本的事項である。 このような状況に憂いを感じながら、海上自衛隊艦艇が、北方領土に面した根室海峡を、初めて航行した日のことを思い出した。 平成9(1997)年5月18日、大湊地方隊所属の輸送艦「ねむろ