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ブックマーク / www.newsweekjapan.jp (39)

  • 誤用ではない、清武GMの「コンプライアンス」発言

    GMとしてチーム編成が成功していたとは思いませんし、会見を文部科学省で行ったり、途中で泣いたりという展開は決して格好いいものだとは思いません。週末の間ずっと続いていたコメントの応酬も日シリーズをバカにしたようで見苦しいことこの上ありません。それはともかくとして、今回、読売巨人軍の清武GMが行った告発については正当性があると思います。 まず第一印象として「コンプライアンスというのは妙だな」という感想を持った人も多いと思います。渡辺会長側の居丈高な反論にもそうしたニュアンスがあります。確かに日のカタカナ語である「コンプライアンス」という語感には、現在のところ英語の "regulatory compliance" つまり「規制への従属」という意味が中心になっています。 つまり、法律や規制など「お上」の決めたルールに従うのがコンプライアンスという感覚です。ですが、この発想では抜け落ちている部分

  • 脱原発の主役は「自然エネルギー」ではない

    ドイツのメルケル首相は5月30日、2022年までに国内にある17基の原子力発電所をすべて廃止すると発表した。ドイツでは10年前に原発を全廃する方針が出され、メルケル政権がその延期を打ち出したものの、福島第一原発の事故で元に戻った。ドイツではチェルノブイリ事故で広範囲な汚染の被害が出て以来、左右を問わず反原発の世論が強く、今回の決定も既定方針の追認とみられている。 原発が危険だからやめようという気持ちはわかるが、その穴は何で埋めるのだろうか。ドイツの電力の20%以上は原発で供給されているが、これを再生可能エネルギー(太陽光・風力など)で埋めるのは無理だというのが専門家の見方だ。今でもドイツはフランスから電力を輸入しており、その電気料金はフランスのほぼ2倍。再生可能エネルギーの補助金が電気料金に上乗せされているためだ。これ以上、原発を減らすと、ドイツの代わりにフランスの原発の電力を使うだけであ

    脱原発の主役は「自然エネルギー」ではない
  • 浜岡原発4号機・5号機停止のタイミングについて

    浜岡の4・5号機の停止命令というニュースには驚きました。 まずアメリカの反応ですが、現時点での詳報としてはニューヨーク・タイムズが田淵寛子記者の例によって「日政治経済社会の文脈解説」として浜岡停止命令の記事を電子版に出している程度です。定時のTVやラジオのニュースではかなりの局が取り上げていましたが、感情的な反応、例えば「日では津波で他の原発も事故を起こしそうなのか」とか「アメリカの原発も停止した方がいい」というような反応は今のところ出ていません。 それにしても、この時点での停止命令とは驚きました。 私としては現時点ではタイミングの問題に関係する4点を指摘しておきたいと思います。 まず第一は、IAEAの日程です。IAEAは5月中旬に日での査察を予定しています。一部には日政府が要請したという報道がありますが、この査察日程は3月下旬の緊急査察を受けて早々にIAEAが決めたものであり、

    yosh0419
    yosh0419 2011/05/12
    使用済み核燃料保管の懸念
  • そのとき、記者は......逃げた<全文>

    恐怖の生中継 福島原発の2度目の爆発を知り、「逃げたほうがいいか?」と動揺するCNNのアンカー(仙台) YOUTUBE 大災害は人間の性をあらわにし、その強さを試す。一瞬にして日常が非日常に取って代わられたとき、人はどう振る舞うか。泰然と構えて冷静さを保ち、周囲に気配りを見せられるか──それとも、パニックに陥って取り乱し、自分のことだけを考えるのか。 メディアも同じだ。戦争や災害で、報道機関としての度量が試される。戦場や被災地といった危険が伴う場所で、いかに冷静に行動し、事態をあおらずに現場の生々しい情報を伝え、正確かつ思慮ある報道ができるかが問われる。 これまで、日には外国メディアに対するある種の尊敬の念があった。ジャーナリズムの理想とあがめ、その権威に頼ることさえあった。新聞などが日に関する論評を求める際、今でも頻繁に「米紙ワシントン・ポストによると......」といったくだりが

    そのとき、記者は......逃げた<全文>
    yosh0419
    yosh0419 2011/04/08
    大事にこそ人や組織の真価がわかる
  • 盛り上がる「東電解体」論議で発送電の分離は実現するか

    福島第一原発の事故をめぐって、東京電力に批判が集中している。特に深刻なのは、数兆円といわれる廃炉と損害賠償のコストである。原子力損害賠償法では1200億円までは電力会社と国の契約で賠償するが、それ以上については必要な場合に国が支援することになっている。「天災地変」の場合には免責になるが、今回の事故が免責事項に該当するかどうかについては政府首脳は否定的だ。そうすると損害賠償額が約2兆5000億円の東電の純資産を上回って、債務超過になるおそれもある。 このため、東電を解体して再編するいろいろな案が霞ヶ関で出ている。損害賠償は全額やらなければならないので、水俣病でチッソの賠償を国が支援したように、資金繰りについては何らかの公的支援は避けられないだろう。しかし経営の破綻したチッソと違って、東電は地域独占なので経営そのものは健全だ。電力供給は止められないので、会社を清算するわけにはいかない。このため

    盛り上がる「東電解体」論議で発送電の分離は実現するか
  • 震災報道、原発事故報道への提案

    今回の東日大震災で被害に遭われた方、避難中の方々、またそのご家族、ご友人などに心よりお見舞いを申し上げる次第です。また危険を冒して救援活動ならびに、原発事故等の問題解決に現在努力されている方々へ、心からの尊敬の念を申し述べるものであります。 それにしても、前回エントリからの数日間で、私たちにとっての全世界が一変するような事態になるとは思いませんでした。今回の震災に関しては、アメリカでは最大限の報道が続いています。一方で、震災発生から時間が経過するに従って、原子力の平和利用の是非であるとか、日復興の資金調達方法と世界経済への影響など、様々な立場からの意見が出始めているのも事実です。 ですが、日人の私には、まだまだそうした大局的な議論にスイッチすることは心理的に不可能です。当面の事態をどう把握するか、情報を受けてどのように自分の精神を保ってゆくかで精一杯というところです。一方で、遠くから

  • アメリカのAO入試はどうして機能しているのか?

    京都大学の入試不正事件を契機に入試制度に関する議論が深まっているのは良いことだと思います。勿論、日でも「情報を遮断した密室での筆記テスト」の弊害はずいぶん以前から指摘されており、例えば「入試では拾えないユニークな人材」を入学させようとAO(アドミッション・オフィス)入試というのがかなり以前から導入されているようです。 ですが、現状は決して上手くいっていない、報道や教育関係者などから伝わって来るのはそんな感触です。最近では、AOで入った学生は就職試験で「要チェック」にして、一般入試に受かって入った学生とは区別するというような会社もあるようで、これまた大学入学後の教育内容をバカにした点で、「学歴ロンダリング」という言葉の持つイメージと同様の居心地の悪さを感じてしまう話です。 そうは言っても、多くの大学でAO入学者には大学の授業についていけるように「入学前教育」をするという現実がある以上、

  • 年金の「運用3号」騒動の原因は専業主婦の年金ただ乗り

    専業主婦の年金をめぐって、国会が紛糾している。サラリーマンのは、年金保険料を払わなくても国民年金を受給できる国民年金の第3号被保険者だが、夫が退職や失業などで厚生年金や共済年金を脱退したときは年金受給資格を失う。この場合は国民保険料を払って第1号被保険者になる必要があるが、それを忘れて受給資格のない人が100万人以上いることが判明した。 そこで昨年3月、こうした主婦が無年金になることを防ぐため、厚生労働省は過去2年分の保険料をさかのぼって払えば受給資格を与える運用3号の創設を決め、昨年12月に実施した。しかしこれでは「まじめに保険料を払った人が損をする」という批判が出てきた。特にこの特例措置が法改正ではなく「課長通知」という法的根拠のない文書によって行われたことが、「国会の承認なしに予算の支出を決める違法行為だ」と問題になっている。 今のところ責任の所在ははっきりしないが、運用3号を決め

    年金の「運用3号」騒動の原因は専業主婦の年金ただ乗り
  • iPhoneが「アメリカ製」だったら

    なぜ負ける? iPhoneの部品の大半は人件費が高く技術集約型の日韓国で作られているのに Brendan McDermid-Reuters ジョン・マケイン上院議員は先日、ABCテレビのインタビューに応じ、iPhoneiPadは「メイド・イン・アメリカ」の素晴らしさを象徴する製品だと語った。事実誤認もいいところだ。ハイテク機器産業の一大拠点であるアリゾナ州選出のマケインが、こんな勘違いをするなんて容認できない。上院議員たちの知識レベルに国民が不安を感じるのも無理はない。 では、アップルが誇るiPhoneiPadは、実際にはどの国で作られているのだろう? 大半の人が中国と答えるだろうが、実はそれも間違いだ。ここには、興味深い真実が隠れている。 アメリカの製造業の崩壊を憂う立場の人々は以前から、国内の製造業と雇用が中国に流出している典型例として、iPhoneを名指しで批判してきた。彼ら

  • 新興国発「食料インフレ」の恐怖

    次に地元のスーパーに行ったとき、世界を騒がせているインフレの兆候を探してみるといい。おそらく何も見つからないだろう。バナナや朝用のシリアル、牛乳は1年前とあまり変わらない値段だ。米労働統計局(BLS)によれば、一般品の値段は09年に0.5%減少した後、2010年に1.5%ほど増加しただけだ。 ただエジプトやバングラデッシュは違う。ここ数カ月の間、経済学者や活動家たちが懸念するとおり、料価格は高騰し続けている。今週公表された世界銀行の報告書によれば、昨年10月から今年1月にかけて料価格は15%増えた。1年前に比べれば30%の増加だ。最近の世界銀行の物価指数を見ると、記録的だった08年の数字まであと3%というところに迫っている。 FAO(国連糧農業機関)の1月の料価格指数は過去最高を記録した。小麦価格は昨年夏の2倍になり、トウモロコシ価格は昨年6月から75%増加。砂糖と用油の価格

  • スタグフレーションがやってくる

    数字の上では、景気後退は過去の話。世界銀行によれば、途上国が平均年6%の成長を順調に続けているおかげで、世界経済の成長率も今年は3%を超える見込みだ。イギリスのFTSE100種株価指数の上昇率は半年で15%を超え、ダウ工業株30種平均もそれに近い伸びを示した。好況期がまた巡ってきたのだと解釈してもおかしくないデータである。 だが欧米の労働者の状況は一向に改善されていない。就職できる機会は依然として極めて少ないからだ。雇用だけではない。財政面でも通貨政策面でも、今年は欧米にとって無知な政策の悪循環の年になるかもしれない。つまり、経済は改善するどころか悪化するということだ。 失業率が高止まりしたままの景気回復はあり得ない。ユーロ圏とアメリカで失業率は10%前後の水準に張り付いている(スペインではその倍)。経済学者の間では、失業率が金融危機前の5%程度に改善するには最低でもまだ数年かかるという見

  • CBS記者レイプ報道の歪んだ真実

    ある女性は一緒に飲みに行った職場の先輩にレイプされ、その後2年間もその男と働くことを強いられた。同僚にレイプされた別の女性は、職場内にある教会の牧師に助けを求めると「レイプされたのは神の思し召しに違いない」と言われたという。 彼女たちが働いていた職場──それは米軍だ。 上で紹介した話は今週、バージニア州の連邦地裁で、ロバート・ゲーツ米国防長官とドナルド・ラムズフェルド前国防長官を相手取って集団訴訟を起こした人々の体験談だ。女性15人と男性2人で構成する原告団は、米軍内でレイプや性的暴行が増加する状況を国防長官が放置してきたと主張している。 昨年3月の報告書によると、09年度に米軍内で起きた性犯罪の件数は前年比11%上昇。しかしこの数字は実際の件数の20%程度に過ぎないだろうと、国防総省は認めている。 軍は特殊な職場環境ではあるが、性犯罪がはびこるのは軍だけではない。ある統計によれば、アメリ

  • 財政再建へと向かうアメリカ、改革初年度の予算案はどうなる?

    アメリカの財政はクリントン政権の1998年からブッシュ初年度の2001年までは黒字を達成していました。これは行革が成功したというよりは90年代のIT革命と金融グローバリズムが牽引した景気拡大のおかげでした。2002年からは、ITバブル崩壊の影響に、9・11テロのショックによる不況が重なり、更にブッシュの軍拡と減税の影響もあって、恒常的な赤字に陥りました。この傾向は、一旦好転を見たものの、ブッシュ政権の最終年である2008年の「リーマン・ショック」に始まる税収不足や、政府による景気刺激策などによって2009年、2010年と赤字幅が1兆ドルを越え、GDP比で10%に迫る状況です。 これに対して、オバマ政権は昨年2010年の11月に、大統領の諮問委員会(財政規律委員会)による答申という形で、長期的な財政赤字削減の目標設定を行いました。内容は2020年までに3・8兆ドルの財政赤字を削減するという壮

  • 記者暴行事件で汚された民衆の勝利

    お祭りムード 襲われる直前、タハリール広場を取材するローガン記者(2月15日、カイロ) CBS News-Reuters ホスニ・ムバラク大統領の政権を崩壊させたエジプトの抗議運動のさなか、デモに参加する女性たちの果たす役割について語られることがたびたびあった。今回の抗議運動の間、参加する女性たちは思いのほか身の安全を感じていたようだ。その安全度はこれまでにないほどだと感じる時さえあったと、一部の報道は伝えている。 それ自体は、エジプトでの女性の現状を物語るものではない。何しろ女性の86%が性的嫌がらせを経験したことがあるという国だ。だが、女性も安心してデモに参加していたという事実が、今回の抗議運動の好感度アップに役立っていたのは間違いない。 そんな雰囲気に強烈な打撃をわせたのが、15日のニュース。米CBSテレビの女性記者ララ・ローガン(39)が11日、タハリール広場でデモの取材中に暴徒

  • 紛争チョコは甘くない

    バレンタインデー反対派はいつも、大企業が悪魔のマーケティングで恋人たちを盛り上げるせいで、シングルたちがどれだけ肩身の狭い思いをしているか不平を言う。だが、バレンタインには世界的な影響もある。 最高にロマンチックな贈り物だったダイヤモンドは、一部の産地では不幸にも殺し合いを招く紛争ダイヤになってしまった。バレンタインのチョコレートが世界のカカオ産地に与える影響も小さくない。 チョコレートの原料となるカカオ豆の問題は、世界最大の生産国コートジボワールで政情混乱が続く今年はとりわけ重要だ。NGOのAvaazは、ハーシー、ネスレ、キャドバリーなどのチョコメーカーやカーギルなどの穀物メジャーにコートジボワールのカカオをボイコットするよう呼びかけている。昨年11月28日の大統領選で敗北した後も、大統領の座に居座り続けているローラン・バグボの資金源になるからだ。 国際的にも認められた大統領選の勝者、ア

  • 東京よ、日本文化を国際舞台に上げろ

    今週のコラムニスト:レジス・アルノー 韓国が国際的な文化大国になるなんて、5年前は誰が考えただろう。韓国の現代映画は世界中で注目の的、釜山国際映画祭はアジアの主要な映画祭だ。ソウル国際公演芸術祭はアジアの主要な舞台芸術フェスティバルで、国外にも作品を輸出し始めている。K─POPはアジアを席巻、今や日のティーンエージャーもJ─POPよりK─POPに夢中だ。 それに引き換え、日文化の輸出が足踏み状態。政府は日の「ソフトパワー」を確立したいと言うが、政府援助はかえって迷惑だ。 20世紀、日映画は世界有数の影響力を誇った。溝口健二はフランスの巨匠ジャンリュック・ゴダールにひらめきを与え、黒澤明はジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』の誕生に不可欠だった。 今では、日映画海外ではほとんど上映されない。質が低過ぎるせいだ。国際的に評価が高いのは、『おくりびと』や『キャタピラー』など、公

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  • 「永田洋子死刑囚の死」を契機として、改めて世代の問題を考える

    いわゆる連合赤軍の幹部として、リンチ殺害事件や「あさま山荘事件」などによって死刑判決を受けていた永田洋子氏が死亡したというニュースを聞きました。永田氏とそのグループの起こした事件、および永田氏の個人的な軌跡については、私はもう関心が薄れています。というのは整理するのは比較的簡単だからです。 自尊感情の強い人間よりも弱い人間のほうが権力欲や支配欲、あるいは「大胆な行動」への飛躍をしがちだという悲劇の典型であること、これは歴史上の独裁者から、現代のブラック企業の経営者に至るまで無数な例があり、永田氏もその一つと数えられるように思います。これに加えて家庭や職場あるいは学園などで個の尊厳を勝ち取る取引のできない人間に限って、自分とは無関係な「究極の不幸」を探す旅に出て、地の果てまで行ってその「不幸の原因」へ暴力を加えることで英雄になろうとする、これもロシア・アナキストの爆弾テロから現代のアルカイダ

  • 日本国債の格付けはなぜ引き下げられるのか | エコノMIX異論正論 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

    1月に格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)が日国債の格付けをAAからAA-に引き下げたが、今度はムーディーズが日国債を現在のAa2から引き下げる可能性を示唆した。この影響もあってか長期金利は上昇(国債価格は下落)し、9ヶ月ぶりに1.3%台に乗せた。 S&Pの格付けは21段階中の4番目だが、AAのスペインより低い。この下のA+はイタリア、その下のAはアイルランド、A-はポルトガル、BB+はギリシャと、財政の破綻したPIIGS諸国が並ぶ。財務省は「日国債は順調に消化されており、債務不履行になることはありえないので、この格付けはおかしい」と反論している。 この反論は、短期的には正しい。格付けは一般に、その債券が債務不履行になる確率を勘案して行われるが、政府債務は増税でファイナンスできるので、原理的に債務不履行は起こらないからだ。日の政府債務がGDP(国内総生産)の2倍近くなっても長

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  • エジプト:祭りの後、でもまたいつでも祭りは起きる

    とうとうムバーラクが辞任した。 1月25日の大規模デモ以来、繰り返される民衆の抗議に押されながらも三週間弱、権力に固執し続けたが、くしくもイラン革命と同じ日、ムバーラク政権は民衆に倒される形となった。 暫定政権を担うのが軍であることには代わりがない。憲法や議会など、政治システムの変革がどう進められるかは、未知数だ。長い目で見たら何も変わらなかった、という結果にならない保証はない。 だが、今後どのような変化が訪れるにせよ、今回民衆運動の勝利が、決定的にエジプト社会の政治意識を変えたことは間違いない。 第一には、普通の人々が体制に挑戦することを恐れなくなったことだ。アラブの長期政権のほとんどが生き延びてきた理由は、現政権が倒れたときに訪れるであろう混乱と変動に、人々が恐怖を抱いたからである。慣れ親しんだコネ関係、暗黙のうちに了解される「超えてはいけない一線」――。長年のゲームルールがなくなった

    エジプト:祭りの後、でもまたいつでも祭りは起きる
  • ニューズウィーク的文章表現研究

    どこの国の週刊誌であれ、読者に興味深く記事を読んでもらう工夫を怠りません。読者を惹きつけるためには、書き出しの一節が、とりわけ重要です。たまには、そんな観点から、ニューズウィークの記事を検討してみましょう。 題材は、エジプトの動乱を伝える記事です。まずは、誌日版2月9日号の「独裁の悪夢を覚ますエジプトの怒り」です。 「エジプトと21世紀の世界をつなぐ通信インフラが1つ、また1つとダウンした。ツイッター、フェースブック、そして最後はすべてのインターネット接続が遮断された。ショートメールも使えなくなり、エジプト全土で無数の携帯電話が不通になった」 エジプトで、ツイッターやフェースブックなどによって反政府デモが盛り上がったので、政府がこれを遮断した、という話の導入として、躍動感のある文章です。これぞ、読ませるための導入です。 書き出しで、21世紀とをつなぐ話をした以上、記事の最後でも、これに

    ニューズウィーク的文章表現研究